Today is my Birthday!!



「今日帰りおっそいねー!ねぇねぇ爆豪くん!」
「死ね」
「まだなんも言ってないよ私」

 帰宅途中、たまたま前を歩いていた爆豪くんにちょっかいをかけようと寄ってみればこのザマだ。全く、これだから暴君は、やれやれ、と肩をすくめてそう言えばちょっとシャレにならないやばい目つきで睨まれた。謝罪速度0.5m/時。

「あー、やだやだ。いつも通り怖いよばくごーくん」
「勝手にビビってんじゃねぇよ」
「ビビってはない。割と心では笑ってる」
「泣かすぞクソブス」

 ルンルンと怖い目つきの爆豪くんの隣で一人くるくる回りながら道を歩いた。はたから見ればやばいやつ認定必須だけど今日の私は特別だから別にいい。

「喚くな俺の隣を歩くな視界に入るな失せろ」
「やーだねっ!このまま爆豪くんのストーカーして帰るの!」
「キメェまじで失せろ」

 そう言いながらも爆破させない手を見ると、実はそこまで拒否してないんじゃないの?と自分勝手な解釈をした。でも本当に二、三発爆破されるようなことを言っている自覚はあるから今日の爆豪くんはマイルド爆豪くんかもしれない。

「今日は機嫌いいの?」
「てめーのせいで最悪になったわ」
「うっそだー!」
「殺す」
「だって爆豪くん、一回も私の目を見てないもん」

 基本無視。でも話しかけられた相手に対しては絶対に目を見て話す。そのあとは無視したりするけど。いつもとちょっと違う爆豪くんにおかしくなって、トコトコと先を歩いて爆豪くんの真正面に立った。あ、ようやく私を見た。

「……どけろ、デブのせいで道が狭くなんだろ」
「言葉の貫通力はいつも以上だね!!!」

 ひどいひどい、あぁひどい。でも私はどうしてもちょっかいをかけたいのだ。なんだって今日は特別な日だから。

「ねぇねぇ、私に何か言うことない?」
「失せろブス」
「ぶっぶー!違いまーす!!!」
「ブーブー言ってんじゃねぇよ豚か」
「そろそろ泣いていい?」

 もうー!と怒ったところで爆豪くんはふーんとそっぽを向いている。知ってるはずなのに、知らないわけないのに。今日が私の誕生日だって。

「誕生日おめでとうくらい言ってよけちー!」
「うるせぇ、黙れ」
「爆豪くんのばーかあーほポメラニアン!」
「おいポメラニアンってどう言う意味だ」
「おたんこなす!」

 ツンデレも拗らせたら面倒臭いでしかなかった。ちぇ、と唇を尖らせていいもんいいもんとそっぽを向いた。どうせなら祝ってくれても、なんて思ったけどそう物事はうまくいかないらしい。

「ま、言ってくれるとは思ってなかったけどね」

 仕方ない、とようやく諦めがつく。せっかくの誕生日だから爆豪くんに祝ってもらいたかったが、爆豪くんを除くクラスのみんなからたくさん祝ってもらえたから別にいいや。言葉は貰えなくとも、無視して帰らないだけで及第点としよう。

「じゃあ帰ろっか」

 にしし、と口角を上げてさりげなく一緒に帰る方向に持って行く。カバンを背負い直して、みんながくれたプレゼントがガサガサ入った紙袋を抱え込んだ。

「おい」
「ん?どうかした?」
「落としてっぞ」
「え?」

 爆豪くんの手の中にあったのは小さなラッピングが施された箱。初めて見るやつで、頭の中にはてなマークが飛び交う。

「本当?それ初めて見るけど……私が落としたの?」
「そうだっつってんだろはよ受け取れクソブス」
「えー……みんなのプレゼント開けたんだけどなぁ」

 帰るまで待つなんてできないから、もらったものは速攻開けさせてもらった。だから未開封のそれは私が学校にいた時にもらった記憶が全くなくて。なんだろう、と投げ渡されたそれをガサゴソと開けてみる。一方の爆豪くんは袋を開け始めた私に見向きもせずにスタスタと前を歩いて行った。

「…………ポメラニアンとブタ?」

 手のひらサイズの柔らかい小さなとても可愛らしい人形が二つ。一つはピンクのブタで、もう一つの茶色くふさふさのそれはポメラニアンとはなんかちょっと違う。なんだっけ、えっとな、名前ど忘れした、えーっと確かこの動物は。

「どっからどう見てもハリネズミだろがアホか」
「……そうだ、それ、ハリネズ、み……」

 ここでふと気付く。爆豪くん、今私の方を一切振り向いていない。落としものだと言うプレゼントを投げ渡してはスタスタと歩いて行ったのだ。つまり私は爆豪くんの後ろを追いかけていた。なのに爆豪くんは振り返ることもせず箱の中身を知っている。

 あぁ、そうか、これは。

「……これ!私と爆豪くんみたいだね!」
「自分がブタだってよくわかってんじゃねーか」
「爆豪くんはハリネズミだもんね、めちゃくちゃトゲトゲしてるもんね」
「るせぇ」

 不器用なハリネズミ。素直にお祝いしてくれたらいいものを、どうしてそうしないの、ほんとにもう、ばか。

「私、これくれた人にさ、ありがとう、部屋に並べて飾ってずっと大事にするって伝えたい」
「…………そーかよ」

 今日は特別な日。なんたって私が生まれた日。目当ての言葉は貰えなかったけど、でも特別な、大切な1日。

「誕生日おめでとう!わたし!」
「自分で言うのかよ」

 呆れているけれど、その笑顔も私にとっては大切なプレゼントだ。



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