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 まるで言い訳のように早口に呟く。彼女の言いたいことが空気と共に伝わってきて、なんとかふたりの間に接点を作ろうとする。
 身元もよく分からない女とこれ以上関わるなと、遠回しにシオリはあたしを突き放したのだ。それもまた彼女の優しさだといまなら分かる。
 シオリはまた黙ってしまった。多分、あまり長くはないのであろう沈黙がいまはやけに痛い。
 断られるだろうか。そんな格好でうろつかれると困ると、また言われてしまうだろうか。
 速まる心臓の音がうるさくて唇を噛み締めた。
「じゃあ、」
 シオリが再び口を開く。
 スカートの裾を固く握り、唾を飲み込んだ。
「また聴いていってくれる? サクラになってよ」
 なにを言われているのかすぐには分からなかった。彼女の言葉が全身にしみ込む頃には、あたしは表情がゆるむのを抑えられなくなっていた。
 これは、受け入れられた、……ってことでいいんだよね?
 胸が喜びで満ち溢れ、何度も首を縦に振る。ギターを持ち直しながら、彼女が小さく笑った。
 




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