キャンプでは気を張らなくて良いし、普段は憎たらしいサバイバーとも和やかな雰囲気になれますよと。リッパーさんに夏のキャンプを勧められて最初はえー?と渋っていた。確かに、色んなハンターやサバイバーと勝負無しで交流が出来るのは良いかもしれないけど…。でもわたしサバイバー大嫌いだから、ゲーム抜きでも馴れ合ったりはしないよ?これで懐かれたら面倒だし。と言いつつ、余りにもロビーくんが一緒に行こうよと誘ってくるのでその可愛さに負けた。一緒に花火大会見ようねという約束の元着いて行ったのに、そのロビーくんをそこらのサバイバーに取られてしまいわたしはくっ!とハンカチを噛む。これだからサバイバーは大嫌いなんだ!わたしのロビーくんをよくもっ…、許せない!ロビーくんは優しいから。わたしもサバイバーの群れに織り交ぜようと凄いこちらを振り返ってくれてたけど、わたしは苦笑いで手を振りその場に留まった。


「行っておいでよ、ロビーくん」


わたしは大丈夫。その一言を最後に、ロビーくんはサバイバー達の影に消えて行き見えなくなる。はーあ…。露骨に溜息。ロビーくん居ないなら帰ろうかなと思っていた正にその時、おやと聞き覚えのある声に呼び止められてギクリと顔を上げた。自分がどんなに誘っても着いてこなかった癖にと。そうフラットな嫌味を言われてしまい口角が引き攣る。


「えへへ、ごめんねリッパーさん」


ロビーくんのお強請りには適わなくて。と苦笑いで告げるわたしに、彼は悩まし気な吐息を一つ漏らしてから軽く頭を振った。その割には一人の様ですが…?とこちらの様子を伺うリッパーさんに、先程のサバイバーを思い出して密かにイラっとする。


「まぁ、ちょっと色々あって」


無意識にも低い声が出て自分でも少し驚いた。しかしテンションダダ下がりのわたしを傍目に、一人なら一緒にランデブーでもどうかと。リッパーさんがわたしの手を取り跪いてみせるので、キョトンと目を丸めて息を吸った。


「…やだ」


ガン!とリッパーさんが落ち込んだ様な反応を見せる。だから何故!と、そう言いたげなリッパーさんに、わたしは意地悪く笑いながら軽く手を振り払った。


「だってリッパーさん、サバイバーに口説かれたら直ぐ着いて行っちゃうじゃん。この浮気者ー」


なんて、今度はわたしが嫌味を言って茶化してみる。へああ、と、困った様に溜息を吐いたリッパーさんが可笑しくて。わたしは手の平で口元を押さえながら、今度はアハハ!と声に出して笑った。しかしその拍子に見てしまったのだ。リッパーさんの奥で、こちらを凝視しながら固まる作曲家を。つい視線がかち合ってはっ!とする。…めっ、目が合った。どうしよう気まずい。とても気まずいっ!作曲家は分かりやすく目を泳がせると、コートの端をキツく握り締めながら勢いよくわたし達に背中を向けた。そのままだっ!と駆け出して行ってしまったのに後ろめたくなる。胸を刺されたみたいにチクチクして、ちょっと痛い。どうしてだろう。追い掛けたいって思う自分がいる。…彼はもう、楽しそうなわたし達を見てどこかへ走り去ってしまったというのに。


「…リッパーさん」


そっとリッパーさんの事を呼んで、ごめんねと眉尻を下げながら微笑した。


「やっぱりわたし、帰るね」


キャンプはまた今度。言いながら、現在キャンプにいる面子を確認して溜息を吐く。やっぱりというかだよねというか…。とっくに居なくなってしまった作曲家の影を追い掛ける様に、わたしもそっとキャンプ会場を抜け出し後にした。自分から手放しておいて今更気になるなんて…本当、バカみたいだ。



I think I like you.
あなたのことが好きかもしれません。


×
- ナノ -