Novel/Series

03

手渡された白いカップ。
中身は空で、自分が淹れたものでも満足そうに飲み干していた眼鏡の男を思い浮かべる。

きっと、悪い奴ではないんだろう。…ただ、好きになれないだけで。

何を考えているのかわからないポーカーフェイス。そのくせ、人の考えていることは見透かしたかのような言い種。
師匠は能力を濫用するようなことは絶対しないから、あの男に裁かれたりはしないし、師匠も気にするなと言っていた。むしろ2人は旧知の友人のように仲がいい。

多分、嫉妬…だ。

「あーあ…」
思わず天を仰ぐ。見上げた先は青空なんかではなくただの木の天井で、余計に気が滅入った。

「セリ?どうしたんだい?」
「師匠…」
キッチンに入ってきた師匠のおかげで、多少気持ちは浮上する。我ながら安いもんだ。
「お客さん、帰ったんスか?」
「ああ、何か面白い人でね。からかってしまったよ」
「へえ」
師匠のお眼鏡にかなうだなんて、相当変な人だったんだろうか。

「で?」
「え…ああ、ミイサさんが来てたんス。体調悪そうだったし、師匠も戻って来そうになかったから帰ってもらいました」
「みーちゃんが、かい?…おれ何かしたかな?」
「様子見に来ただけだと思いますよ。急ぎとかじゃなさそうだったし」
ふーん、と唸って、師匠が首を傾げる。ああ、可愛い。なんて思ってしまう俺は、相当彼に入れ込んでしまっているようだ。

「…まあ、また近いうちに来るだろうね。それより、お前コーヒー淹れていただろう?一杯くれないかい?」
「…!今すぐお持ちするんで、店の方で待ってて下さい!」
「ふふ、楽しみだねぇ」

どうか、カップが空になりますように。


 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -