Novel/Short

02

「ごめん…ごめんね、えーた。お、俺…えーたがフられて、嬉しい…んだ」
「…はい?」
思いもしなかった言葉に、声が裏返った。

「すき…。俺、えーたが好きだ」

…こんなに、必死で。こんなに悲壮な告白は初めてされた。
与一は冗談でこんなことを言うヤツじゃない。涙に濡れて、でも与一らしく一本筋が通った、何かを決心しているような顔に、俺もコイツの話を真剣に聞かなきゃいけないと思った。
ずっとただの幼なじみだと思ってた、俺と同じ、男からの告白。それに対する嫌悪感なんて、驚きで吹っ飛んでいた。

「い、今は、えーたが知っててくれれば、それでいいから…」
与一が眼鏡を外して、ごしごしと目元を擦る。
「俺、が…えーたと釣り合うような男になったら……俺のこと、考えて、みてほしいんだ。だから…だから…」
「……だから?」
思ったより冷静な声が出て、ビクリと与一の体が震えた。

「だから、1週間だけ…待ってて…!」

ボロボロと大きな涙の粒が落ちていく。与一のジーンズの膝の辺りが水気を吸って変色している。
「わかった、1週間…な?」
「…!うん…!」
こんなに嬉しそうに笑った与一は久しぶりに見た。…なんか悔しいからデコピンしちゃる。
「えいやー」
「いたっ」
キレイに決まったデコピンによって赤くなった額を撫でて、俺も笑う。
「まずはその泣き虫を直すことから始めなきゃ、な!」
「わ、わかった」
「ん。まあどっちにしろ今日は帰るわ。じゃーね、与一」
「また、ね…栄太」

名残惜しそうに俺を見上げた顔が、目に焼き付いた。


 
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