02
目黒家は美形一家だ。
ぶっちゃけ、青木一族が束になっても足下にも及ばないと思う。俺もイケメンとか言われてもその程度ですよ。
…そんな現実逃避をしていたら、いつの間にか俺の右手は目黒家のインターホンをピンポンしていた。
バカ!もう少し心の準備をだな…!
「あら、えーたくん!」
早苗さんの笑顔が、そこにあった。
早苗さんにロールケーキを渡して、与一の部屋へ向かう。
大事な話があるんだ、と早苗さんに言うと、
「じゃあこのケーキは私が独り占めしちゃうわね!」
と皿とフォークを用意していた。相変わらず、かわいい人だね。
見慣れたドア。ぶら下がったプレートには「よいち」と書かれている。
コンコン。
『…えーた?』
こもった与一の声が聞こえる。
「与一、入るぞ」
部屋に入る。が、与一の姿が見当たらない。確かに声はしたよな?
ぐるり、部屋を見渡す。
「……お前、何でそんな隅っこに…」
ベッドの陰でいわゆる体操座りってやつをしている与一を発見した。デカイ体をよくもここまで縮めたもんだ。
「ほら、こっちおいで」
ベッドの縁に座って手招きをすると、ゆっくりと立ち上がって隣にやってくる。
ああ、本当コイツ、かわいい。
与一の顔を覗き込んで、眼鏡の奥の目を見る。戸惑いの色はあるけれど、赤く充血したり腫れてたりはしていない。
…泣かなかったのか。
黒い髪に指を通す。与一は一瞬ビクリと体を揺らし、それから体の力を抜いた。
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