君への愛の歌
聖の歌は相変わらず人気が高い。
最近は切ないラヴソングを歌うことが多くて、ドラマの主題歌に使われていたりもしているようだ。
あの電話から1年が経っていた。
あれから毎日のようにアイツの歌を聴いて、CDが発売が告知される度に初回生産限定版を予約して、CDショップから連絡が入ったその日に受け取りに行って。
「……バッカみてえ」
自分から別れを告げたクセに、未だにアイツが忘れられない。むしろ、日々アイツの存在が俺の中で少しずつ大きくなって、胸いっぱいに広がっていくのを感じている。
会いたかった。会って、好きだと言いたかった。
でも、俺は意地っ張りで素直じゃないから、アイツに連絡なんて…できない。
永遠に、サヨウナラ。
そう、思っていたのに。
『聖、引退』
テレビ画面に踊るその言葉。インタビューに応じるアイツは、穏やかな笑顔を浮かべている。
どうして…あんなに憧れていた歌手になれたのに突然やめるだなんて!
どこかの記者が俺の心を代弁してくれて、聖は小さく笑いながら答えた。
『俺は愛する人の側にいたいだけだよ』
その後もインタビューは続いていたけれど、突然テレビは聖を映さなくなって、それに驚く暇もなく、
「ちょっと不用心じゃない?玄関の鍵、開いてたよ」
ここにいるはずのない、さっきテレビから聴こえていた少し掠れた声が、耳元で聴こえた。それから、懐かしい体温が布越しに伝わってくる。
「遅くなってごめん」
「…バカ野郎。早く東京に帰れ」
「ここが俺の帰る場所なの」
「……おかえり、聖」
「ただいま、一哉」
久しぶりのキスは、やっぱり下手くそだった。
「…お前、何で俺んち知ってんの?親にも口止めしといたのに」
「えッ(一哉の実家に行ったらお姉さんがノリノリでここまで車で送ってくれたとか言えない…!)」
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