Novel/Short

01

今日、俺は拾い物をした。
財布?いやいやとんでもない。俺が拾ったのは…おっさんだ。

「ちょ…大丈夫ですか!?ケガは?立てますか?」
バイト先に向かう途中、道端に落ちていた…いや、倒れていた男に、こうして声をかけてしまったのが始まりだった。俺は自他共に認めるお人好し、かつお節介な世話好きだ。その俺が人が倒れているのを見過ごせるはずもなかったのだ。
「う…」
よっこらせ、とどうにか男を仰向けにすると、男が小さく呻いてゆっくりと瞼を上げた。なんだ、外傷もないし、案外平気そうじゃないか。
「どうしたんですか、こんなところで…」
「…ら、…った…」
「え?」
「…はら、へっ…た…」
つまり、この男。
いい年して、ただの行き倒れだったのだ。

空腹のあまり意識朦朧としている男から、必死に家の場所を聞き出して男を担ぎ上げる。やべえ、超重い。
男の家がすぐそこだったのが救いだ。そこは普通…にしたらちょっと立派な一軒家だった。
「家、着きましたよ。もう行き倒れないでくださいね」
「…開けて」
「え?」
「玄関、開けて…ソファまで連れてって…」
見ず知らずの人間にそこまでさせるか、普通…。歩く気なさすぎるだろ…。
「鍵は?」
呆れながら問うと、男は少し思考を巡らせるように黙り込んだ。
「…多分、ポケット…」
「はいはい」
男のジーンズのポケットに手を突っ込んで指先に触れたそれを引っ張り出し、鍵穴に突っ込んで回すと、扉はするりと音もなく開いた。

廊下を適当に進むと、リビングらしき場所に出る。俺はソファに男を下ろして回れ右をする。そのまま玄関に向かおうとしたが、男に手首を掴まれた。今度は何事?
「飯」
「…はい?」
「作って」
「頼むから文章で喋って下さい」
「腹減って動けないから、飯作って」
「……不味くても文句言わないでくださいよ?」


 
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