Novel/Short

05

片山の問いかけに、俺は答えられなかった。

「あの頃は、ただの憧れだと思ってた…でも違うんだ。何年経っても貴方が好きで、好きで…貴方とキスしたかったし触れたいと思った。恥ずかしい話だけどね、初めて女の子とエッチした時も貴方のこと考えてたよ」
「聡太、」
「気持ち悪いでしょ、俺。…さっきはごめんなさい。もう二度と貴方に近付いたりしないから…だから、思い出だけ、ください」
「聡太…!」

泣きながら笑おうとする片山の姿に頭が真っ白になって…気付けば俺は彼の肩を抱いていた。
「…賢吾さん、離して」
「嫌だ」
「賢吾さん!」
「駄目だ…。頼むから、そんな寂しい事言うなよ…」
腕の中の体は俺より少し大きくて、骨ばっていて、筋肉質で。女性のような柔らかさは少しもない。けれど、感情豊かで、優しくて…臆病な、繊細な生き物だ。
「…俺は、貴方に比べてまだガキだし頭も悪いから、貴方に迷惑をかけることしかできない」
「迷惑なんかじゃ…」
「賢吾さんは優しいね。…それでいて、残酷だ」
「…え?」
片山がふわりと笑う。でもその目は暗く濁っていて、俺の腹の底がスッと冷えていく。
「同情なんかいらないよ。俺が欲しいのは貴方だ。無理して俺を受け入れた所で、きっと貴方は後悔する。俺が重荷になる。…貴方の傍にいられないなら…またあなたが離れて行ってしまうなら……お願いだから、最初から受け入れないで」

恋愛というものはこんなに悲しいものなのだろうか。好きになってはいけない理由などどこにあるというのだろう。俺にはよくわからない。
男同士だからというだけなのか?…もし、そうなら。

「お前は…俺がそんなに懐の浅い人間だと思っているのか」
「…賢吾さん?」
涙をいっぱい溜めた目が丸く見開かれる。
「俺が自分で受け入れたものを簡単に捨てるような男だと思っているのか?お前はそんな男を好きになったのか?性別の壁を越えてでも、背中を追いかけてでも好きだと伝えたい相手なんじゃなかったのか?それは…それはお前自身を否定することと同じだぞ」
「俺、自身…?」
俺の言葉を復唱し、片山はうつむく。真ん中より少し左にずれた所にあるつむじを眺めながら、俺は言葉を続けた。
「俺は、恋愛対象としてお前が好きかどうかはまだわからない。でも、お前を受け入れる覚悟はできてる。受け入れれば二度と手放すことはないだろう。…俺の手を取るか否か。取った後離すか否か。その選択肢はお前に預けるよ、聡太」


 
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