Novel/Short

03

「…はい」
『よお、受け取ったか?』
心地いい低音が俺の耳をくすぐる。ああ、この声をずっと待っていた。
「ええ、今夜宮橋と拝見いたします」
『そうか。いつも苦労かけるな…お前たちの働きがなければこんなにスムーズに事は運んでいなかっただろう。ありがとう』
「いいえ、これが俺たちの仕事ですから」
『そうだな…じゃあな。愛してるよ、隼』
「…俺も…です、先輩」
鷲津が携帯電話の向こうでくすりと笑う気配がする。ああ、と一言だけが耳に届いて、通話は切れた。


桜庭の上手い立ち回りのお陰で、腐りきったこの学園は想像以上のスピードで崩壊への坂道を転がり始めている。
ここ数日間の出来事を思い返し、俺は心の中でそっとほくそ笑む。既に親衛隊の制裁は始まっている。この時点で全行程の三分の一程度だろうか。一人で辛い制裁を負う桜庭には申し訳ないが、制裁は親衛隊を潰す上で欠かせない。ただ、鵜山が風紀委員会に潜入している限り、桜庭が本当に危ない目に遭うことはない。
鵜山をトップに据えた風紀は恐らく近いうちに取り締まりの強化を始める。ありきたりないじめ程度で動くことはできないだろうが、命の危険に係る行為や強姦などを目撃した際は容赦なく現行犯で処分対象になる。厳密に言えば停学や退学の類である。

俺にも親衛隊はある。しかし、俺と宮橋の繋がりが深いため、生徒会の親衛隊の中でもかなり活動が穏便な方だ。
制裁はまるっと禁止しているし、月に二回ほど集会も行っている。親衛隊を潰すことも目的の一つであることを考えると、俺を慕ってくれる彼らには申し訳ないとさえ思ってしまうほどにいい子が多い。彼らは一般生徒の間でまことしやかに流れる、俺の悪い噂…主に肉体関係に関するものがほとんどだが…それらがすべてただの噂にしかすぎないことを理解している。その上で俺に付いて来てくれる彼らを無下にすることはできない。
俺は俺の仕事をする。生徒会の一員として、そしてXXXXのメンバーとして。

それから…鷲津のために。

鷲津と付き合うことになったのは半年ほど前のことだっただろうか。
ずっと、俺は彼に対して憧れを抱いていた。それは決して恋愛感情ではなく、XXXXを纏めるリーダーへの尊敬の念だった。
それがどうしてこうなったのかはよくわからない。彼に甘い言葉を囁かれる度に、ドキドキして…ほだされる、というのはこういうことなんだろうと思いながらも、彼の腕の力強さに身を任せてしまう自分がいた。

同時に、これは決して誰にも知られてはいけない恋だと…。そう思った。


 
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