Novel/Short

02

もし計画に失敗すれば、学園の内部事情とアンダーグラウンドな一面を見てしまった俺たちは卒業と同時に存在を消されると思って間違いない。成功した所でどうなるかもわからない。
俺たちは身分を偽り、XXの計画のためだけにこの学園に潜入している。卒業してしまえば、陰で死んだところで大きな騒ぎは起きない…そんな身分の者ばかり。

しかしながら、俺たちは実際の計画の発案者…依頼者が誰なのか、全く知らないのだ。
鷲津の召集で入学し、計画の全貌から演技方法までの全てを彼から学んだ。おそらく、依頼者を知っているのは彼一人なのだろう。


「オイ、ボーっとしてんじゃねえぞ。何のために呼んだと思ってんだ」
桜庭が唇を動かさずに小声で言う。『桜庭鷹正』を演じている時よりワントーン低く、荒い口調。これが彼の本来の姿なのだろう。
「…悪い」
俺も小さくそう謝ると、桜庭はぶつかるようにして抱きついてきた。周りから甲高い悲鳴が上がる。
「あー…マジうるせえな、クソガキどもが」
カツラで顔のほとんどが隠れているからいいようなものの、すぐ下に見える額には青筋が浮いているのだろう。抱きしめ返して背中を擦りながら落ち着けと宥めると、スルリと桜庭は体を離し、またな、と手を振りながら教室へと戻っていった。

調査報告のデータの入ったUSBを俺のブレザーのポケットに忍ばせて。

桜庭の後姿を見送って、俺はそちらに背を向ける。
いち早く自室に戻ってこれの中身を見なければならない。俺にこれが渡されたということは、既に鷲津と鵜山には情報が回っているということだ。最後に渡された俺は親衛隊長の宮橋と一緒に見ることになっている。宮橋となら周りから怪しまれることなく、情報が全員に回るまでの時間を短縮できるからだ。
スラックスの尻のポケットから携帯電話を取り出し、宮橋の電話番号を呼びだす。スリーコール以内に電話に出る辺り、彼はXXとしても親衛隊長としても優秀だ。
「あー、ひばりん?今だいじょーぶ?」
『ええ、どうしました?』
「今日の夜…いいね?」
『わかりました、お邪魔します』
「待ってるねー」
ブツリ、という音と共に途切れた単調な声を思い返す。
宮橋は唯一演技らしい演技をせずにいるメンバーだ。冷静沈着を常とし、誰かを陰から支えることに喜びを見出す性格らしく、彼の存在はとても心強い。

携帯電話をポケットに戻そうとした瞬間、手の中のそれが震える。
サブディスプレイには『鷲津先輩』の文字が光っていた。


 
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