Novel/Short

01

高校二年生の、春。
俺の本当の学園生活が始まった。



「隼ー!」
廊下の向こうで俺を呼ぶ声がする。もう大分聞き慣れた声、見慣れた容姿。

その全てが丸一年かけて作られたニセモノ、だなんて…誰が気付くだろうか。

「どーしたの、鷹正?…あ、俺に会いたくなっちゃった?」
自分の口からこの言葉が発せられているだなんて、二年前の俺は思ってもみなかった。ああ、気持ち悪い。好きでもない相手に甘い言葉を囁くこの唇が恨めしい…。
「そ…っ、そんなワケないだろっ!」
目の前の、明らかにカツラだとわかる黒い髪の転校生…桜庭鷹正はそう顔を赤らめた。俺はそんな些細なことすらも演技であると知っている。


XX(ダブル・クロス)。
英語で『裏切り者』を指すこの言葉が、俺と桜庭を繋ぐ、本当の絆だ。
ここ、白臣学園の生徒会とその親衛隊…。密接な関係にある二つの組織は学園全体を腐敗させる最大の原因である。いつの間にか定着してしまっていた忌々しい制度によって腐敗の進んでしまったこの学校を、制度の崩壊によって解放する…それが俺たちXXの目的。

XXは五人のメンバーから成っている。
生徒会会計として内部から生徒会を監視する俺、安曇野隼。
先ほどの転校生・桜庭鷹正はわざと目立つ存在として校内で動き回り、生徒会の注目を引くことで近付き、外から弱点を探している…。
残りのメンバーは、不良クラスを纏め上げ、その独自の情報ルートと他のメンバーが集めた情報から制度の崩壊への道筋を作るXXのリーダー、鷲津哲哉。
それから、生徒会と関わりの深い風紀委員長として、鵜山基治が外部から監視。
最後に、俺の親衛隊長として親衛隊内部に入り込み、彼らの動きを抑制しているのが宮橋雲雀である。

去年一年間、俺たちは各々の演じるキャラクターと地位を確立し、活動を円滑に進めるために動いてきた。

勝負はリーダーである鷲津と鵜山が卒業を迎えるまでの、今年一年間だ。


 
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