Novel/Long

16

瑞樹では筑紫には敵わない。とっくにわかりきっていたことだ。
以前押さえつけられたとき、身動きが取れなかったこと…それから、筑紫に対して恐怖心を抱いてしまったこと。圧倒的な力の差が、そこにはある。

大きな屈辱…苛立ち、悔しさ。それらを必死に抑え込み、瑞樹はソファに体を預ける。
「…いい子だ」
筑紫の左手が瑞樹の頭を撫で、瑞樹の体に鳥肌を立たせていく。
「とっとと終わらせろよ、変態。嘘吐きやがって」
「欲望には勝てないな…俺もまだまだだ」
「……ッ!」
舌打ちをしようとした瞬間、噛み付くようなキスを仕掛けられた。甘噛みと呼ぶには少し強すぎる力で唇を噛まれ、唇と唇の隙間から肉厚の舌が滑り込む。歯列をなぞり、上顎をくすぐり、瑞樹の舌に絡みつくそれは、まるでそれ自体が一つの生き物のようだった。
ぐちゅり、唾液の混ざり合う音がした直後、瑞樹が筑紫の胸を押す。唇を離してみると、瑞樹は大きく肩と胸を上下させていた。
「瑞樹?大丈夫か?」
「……キスの仕方、忘れた…」
「…はい?」
元々性欲が強くなく、他人と肌を合わせることが嫌いな瑞樹はあまり性行為の経験がない。その上女性が苦手で…だからといって男が好きなわけでもないというのだ。
「…お前、それは男としてダメだろ」
「うるせーな!女って…何か力入れたら折れちまいそうで触るの怖いんだよ。童貞じゃないだけマシだ」
「ああそう…。わかった、優しくしてやるから安心しろよ。な?」
「ヤらなきゃいい話だと思うんだけどな…」
「うるさい口塞いでやろうか?」
「…遠慮しとくわ」

ゴツゴツとした手のひらが、ゆっくりと瑞樹の胸を這う。時々その飾りを掠めたり、指先で円を描くようにこねくりまわす。
「…さすがに初めてじゃ感じねえか」
「むしろ痛いんだけど」
「じゃあこれは?」
「…っ」
同じ場所に濡れた感触を感じて、思わずねっとりとそこに舌を這わす筑紫の髪を思い切り掴む。
「痛いな」
「もう、いいから…早くしろ…」
小さな快感らしきものが瑞樹の腹の中で渦巻き始め、屈辱で呻きを上げる。
「誘ってんのか?案外可愛いね、お前」
「…るせぇ」


 
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -