Novel/Long

15

熱めのシャワーを頭から浴びる。冷えた体が急激に温められて、皮膚がヒリヒリする。熱い湯に体の芯が温められる感覚に、瑞樹は身震いした。

今日は色んな事がありすぎた。久野のこと、それから筑紫のこと。求めてもいないのにたくさんの情報が一気に流れ込んできて、脳内での整理が追いつかない。
それもこれも、筑紫が自分の前に現れてからだと、瑞樹は胸の中で筑紫を罵る。
ここ数日間、筑紫という男を見てきたが、彼の真意は瑞樹にはこれっぽっちも見当がつかない。何故瑞樹に必要以上に関わろうとするのか…彼と久野が旧知の仲であったことは本当に偶然だったのか…。いや、久野から瑞樹の話を聞いたからこそ、瑞樹と関わろうとするのだろうか。
衝動のまま、頭を掻き毟る。湯が飛び散って鏡を濡らした。
「クソ…」
『わからない』というストレスに暴言を吐き捨てると、曇りガラスの向こう側に他人の気配を感じた。
「瑞樹?着替え置いとくぞ?」
「……ああ」
瑞樹の様子に不信感を抱いたのか筑紫はしばらくその場を動かず、瑞樹が出て行けとガラスにシャワーを向けると、ようやく脱衣所を出て行った。

瑞樹がリビングに戻ると、入れ替わりに筑紫が風呂へと向かった。しばらくして聞こえてきたシャワーの音を聞いているうちに、眠気が意識を侵食する。欲求に逆らうことなくさっきまで座っていたソファに横になり、目を閉じる。
考えなきゃいけないことは多々あるが、今は何より眠たい…。



しばらくして瑞樹は肌寒さを感じて目を覚ました。腹の辺りがスースーする。
「…おいコラ、何してんだテメー」
瑞樹に覆い被さり、Tシャツの下に手を突っ込んでいる男…。水に濡れて髪型は崩れているし、これまで見たこともないほどラフな服装だが、確かにここの部屋の主…筑紫である。
「何って…ナニ?」
「…警察呼ぶぞ」
ふざけて下品なことを言う筑紫に対し、瑞樹は怒りを隠そうとするそぶりもない。その顔を見下ろして、筑紫は嘲笑う。
「冗談だろ?そんなつまんねえことすんのか、お前は」
心から失望したと、声色が、目が、空気が語る。
瑞樹は触れ合った肌が、チリチリと焼けるような痛みを帯びる錯覚に陥った。筑紫を造る全てが、筑紫を取り巻く全てが、恐怖や畏怖そのものへと変わる。
「本気で嫌なら俺を殺してでもここから這い出せよ。なあ、瑞樹」
「……」
「ま、お前に俺は殺せないと思うがね」
「……クソが」
どうにか絞り出した言葉は掠れて、筑紫の嗤いに掻き消された。


 
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