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アイラビュー
ちょっとそこらへご一緒しませんか、義公殿に誘われ二つ返事で同意した。

二人で馬に乗り、城を出て小高くなった丘へと登る。季節は初夏。陽射しが強くなったとはいえ、風が吹き抜ければまだまだ涼しい。

「いやあ、まさか着いて来てくれるなんて思わなんだ」

相変わらずのにこにこ顔で義公殿が満足気に髭を撫でつけている。あんまりにも目尻を下げるものだから、こちらもつられて頬が緩む。

馬の手綱を木へとくくりつけると、彼は私へと手を差し出した。

「なまえ殿、ささ、こちらへどうぞ」
うやうやしく頭を下げる彼にこちらも大袈裟にお辞儀仕返す。

「ありがとうございます」
その手を取ると、木陰へと導かれた。首尾よく布を敷きその上へ座るよう促される。

布、用意してたのか。どんな顔をして準備していたのか想像して笑いが込み上げた。私が座ると、彼も隣へと腰を下ろす。

「風が気持ちいい」
呟いて彼へ視線を向けると満足そうに、少し自慢気に微笑んでいる。

「突然のお誘いなんでびっくりしました」
「んん、最近なまえ殿の元気がない気がしましてなぁ。何か思い詰めているんじゃないかと思いまして」
「あら。さすが義公殿。すべてお見通しなのですね」
「少しでも気晴らしになればと、お誘い致しました」
「お心遣い、感謝致しますわ」

そう返すと、義公殿はむふ、と吹き出した。私も我慢できなくなりついついにやけてしまう。

「なまえ、喋り方がおかしいぞ」
「そういう義公殿だって変じゃない」
「それは、ほら、たまにはこういう雰囲気もいいかなーと思って」
「いつまで続けるのかと思ってちょっと緊張しちゃったよ」
「うん、俺も止め時を見失ってしまった」

それからお互い顔を見合わせてうははと笑い合う。

「それで、元気は出たか?なまえ」
「うん。なんかすっきりした。ありがとう義公殿」

そう言うと彼はまたも非常に満足気に頷き、私の頭をわしわしと撫でる。大きい手だ。いい子いい子されてるみたいで、とっても嬉しくなる。

いつもこうやってさり気なく元気づけてくれる義公殿が大好きだ。私を喜ばすことばっかり考えて、行動してくれる義公殿が大好きだ。

こんなにも存在感あるのに、本人は影が薄いとか気にしちゃうようなとこも大好きだ。

我慢できずに彼の頬へ唇を寄せると、どわっとか言いながら顔を真っ赤に染めていた。


    *


「さて、それではそろそろ帰りましょうかなまえ殿」
またしても畏まって義公殿が言う。

「それやめてよー。笑っちゃう」
「笑っちゃうとは失敬な。紳士らしくていいと思わない?」
「えー。いつもの義公殿の方が好き」
「そ、そこまで言われちゃ、しょうがないな。この紳士義公は封印しておこう」

馬に乗る寸前、義公殿がんふふーと笑う。それから手を差し出した。

そこには色とりどりの小さな花束が握られている。

「俺もなまえが好きなんだな、これが。お前が嫁で本当に良かった」

これからもよろしく。
下がった目尻が何よりも愛おしい。
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