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愛のカタチ
砂埃。金属音。叫び声。馬の嘶き。断末魔。戦場のすべてが私の血をたぎらせる。

柄から伝わる肉を切り裂く感触に思わず頬が緩む。殺しても殺しても敵は一向に減らない。

私のものだ。戦場のすべて喰らい尽くしてやる。

刀をふるいながら茫洋と考えを巡らせる。いつからこうなったのだろう。人間の命を奪うことに無常の喜びを感じる。そのためだけに生きていると言ってもいいだろう。

別にその事で後悔とか、罪悪感を持ったりはしない。上辺で誤魔化せる程安くできちゃいない。

けれど、もっとずっと昔はそうではなかった気がする。記憶を紐解いても、思い当たる事は何一つ浮かび上がらなかった。

その代わりといってはなんだが、つい先日の事が頭をよぎる。

諸葛誕。奴は戦を先導する身でありながら、きれいごとを並べ立て私を糾弾した。

人の死という結果は変わりはしないのに、それから目を背けている。力もないくせに、抗って、もがいて……。

「──おもしれぇやつ」

そのくせ理想だけは馬鹿高い。

あの時私はあいつに言った。身内に手はかけない、と。だが裏切れば殺す、そうも言った。

諸葛誕が私に食いかかった時から、こんな日が来ることを心底望んでいた。

この手であいつの息の根を止めてやりたい。その瞬間のあいつの顔はどう歪むのだろう。想像するだけで絶頂に達してしまいそうだ。

清廉潔白。くそ真面目で堅物。その皮を剥いでやりたい。どす黒い感情に支配され取り乱し嘆き喚き絶望する姿が見たい。

まさか、あいつが反旗を翻すなんて!

絶対に誰にも渡さない。私のものだ。私の獲物だ。嬉しくて笑いが止まらない。ああ、早く会いたい。


    *


「なまえ殿……」

諸葛誕が呟き私を鋭く睨みつける。鳥肌が立つような目だ。

「約束しただろ?殺してやるって」
「そうだったな」
「さぁ、最高の最期にしようぜ」

互いに得物を構え、距離を取る。

「だが、易々とやられるわけにはいかないのだ!」

諸葛誕が吼える。そらすらも私を昂らせる要素にしかなり得ない。

「愛してるよ諸葛誕」
全力で地を蹴った。
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