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猟奇的な彼女
人というのはここまで残酷になれるものなのか。

血の雨を浴びたかのように、全身を赤く染めたなまえが屍の山の中で1人立っている。まるで獣だ。飢えた獣だ。

「なまえ、ここまで……ここまでする必要はないだろう」
私の声に反応し、彼女はゆっくりと振り向く。

「諸葛誕か」
ずたずたに切り裂かれた死体を踏みつけながら、こちらへと向かってくる彼女は息ひとつ乱していない。

あたりに漂う錆の匂いがなまえが近づく度、より強くなる。

「なぜ……殺したのだ」
「得物持ってこの辺うろうろしてやがったからな。殺すだろ」

白々と言い放ち、頬や口元の返り血を拭う。くっせぇ、と顔を顰めながら。

「この者達は兵ではない! 農民だっ!」
「でも敵だろ」
「殺す必要がどこにあった!」
「ぎゃーぎゃーうるせぇな。んな大声出さなくても聞こえてるよ」
「っ! お前はいつもそうだろう! 殺す必要のない者まで手にかける!」
「だから何だよ。戦だろーが。抗う者も歯向かう者も皆殺しだ」

鋭い眼光が突き刺さる。殺気立った瞳にいつもであれば臆してしまうのだろう。だが、今回ばかりは私も引く気は毛頭ない。

なまえは手に余る荒くれ者だが、いつまでも好き勝手させる訳にはいかない。これ以上無駄に命を失わせる訳にはいかないのだ。

「殺さずともいい者もいる。我が軍に降れば良い働きをする者もいるだろう。農民とて地を耕し我らに益をもたらしてくれるだろう!」

哀れに殺された民達を思い、なまえに対する怒りで手が震えた。そんな私をちらと見るや彼女は突然、ぐっと距離を詰めてくる。

「お前が言ってんのは全部きれい事だろうがよ。戦ってのは怨みあい、憎しみあいだ。殺されたら殺して、殺したら殺される。馴れ合いなんていらねんだよ。お前が望んでるのはなんだ?手を取り合って仲良しごっこか?勝者のいない戦でもするつもりか?脳内お花畑だな。気持ち悪ぃな、おい。妄想ならお布団の中で一人でしてろ。私のやる事が気に食わねーんなら、殺してみろよ。できればだけどな」

胸倉を掴まれ、一気に捲し立てられる。血走った瞳が、まるで獲物を捕らえたかのように興奮の色を灯す。

ぞくり、と全身の毛が総毛立つのを感じた。

「安心しろ。お前は身内だ。殺しはしねぇよ」

私の恐怖を察したのか、なまえはせせら笑う。掴まれた胸倉が解放される。二度とくだらねぇこと言うなよ、と付け加えて。

身を翻し先へと進む彼女が、鳥の囀りのように優しい声で囁く。

「でも、諸葛誕。お前が裏切ったんなら、その時は私が殺してやるよ──なるべく苦しめてな」
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