短編 | ナノ


▼ におうまさはるというやつは5

あれから、数日後。
なんとなく気まずくて、仁王とは一度も話していない。

四月からずっと前後でセット、腐れ縁かなにかかと思われた席替えも、今回は離れてしまった。
おかげで、授業は集中できるし消ゴムは無事だし、ゆっくり平凡な毎日をおくっている...けれど。

視線をすべらせると、仁王が机に付しているのが見えた。
そういえば仁王は、休み時間ほとんど机に伏して寝ていたっけ。
ああ、そうだ。休み時間はいつも私がちょっかいを出していたんだ。

私はなんて馬鹿なんだろう。
どうして気づかなかったんだろう。

混乱させてたのは、わたしの方だったんだ。

「仁王」
「...なんじゃ、ダイヤモンドか」
「仁王、起きて」
「嫌じゃ」
「起きてよ。仁王がいないと、つまらないよ」
「...ダイヤモンド?」

仁王がやっと顔をあげた。
長いまつげが揺れている。驚きの表情だった。

「...熱でもあるんか?」
「ばか。ないよ」
「まーくんと離れて寂しいんか」
「うん」
「...お前、本当に熱あるんじゃなか」

フッと顔に影がかかり、思わず目を瞑る。
大きくてゴツゴツしたものが額に触れたのがわかった。

「熱はないが顔が真っ赤じゃ」
「...うるさいよ」
「フッ、いつもの生意気が戻ってきたな」

仁王はそのまま私を抱き締めて、肩に顎をのせてきた。
仁王のやわらかい髪が頬にかかる。

「おまえさん、俺に構うくせに、そういったアプローチはないし、告白もなかった。」
「...」
「だが、女友達にしては、俺のなかに入りすぎてた」
「...」
「おまんが好きじゃ」

ぎゅ、と抱き締める力が強くなる。
そろりと私も背中に手をまわした。

仁王の香りが私を包み込んで、世界が変わる。
言葉などいらない。
仁王と一体化したような感覚が私をどこかに連れていって―――、


ここがどこだか忘れさせていた。


「お熱いね〜!ヒューヒュー!」
「やるな〜仁王!」
「おめでとー!」

「おまんら...空気読みんしゃい!」

クラス中が沸き上がる。
仁王は体こそ離したものの、その手は私の手を握っていた。

もしかして、仁王、甘えん坊?

今までの仁王の行動すべてが私へのアプローチだということに、今更ながら気付く。
仁王にも可愛いところがあるなあと、つながった手を握り返した。

におうまさはるというやつは
(可愛くて格好良い自慢の彼氏!)

[ back to top ]



第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -