▼ シンデレラライフ
靴擦れが痛い。
かつん、とヒールがコンクリを蹴る。
帰宅ラッシュの駅のホームは人が溢れていて、私は人の波にほぼ流されるようにして歩をすすめた。
前のサラリーマンの灰色の背広がすっと電車にのりこんでいく。
途端に視界がひらけて、視線がある人をとらえた。
数メートル先にとらえたその人は、後発の列に並んでいる。
オレンジかかった髪色はどうにも派手で、3秒ほど見つめてしまった。
と、その人が顔をあげる。
視線に気づいたのか、こちらを見て手をふってきた。
うわあ。
すごいイケメンだ。
まゆげが細く、髪色も相まっていかにもチャラ男といった感じだが、
間違いないのはその造形の端正さ。
あれはモテるだろうなあと素直に感心してしまった。
イケメンはこちらを向いてまだ手を振り続けている。
流されるように歩く私は、段々とイケメンに近づいていっていた。
その間目線を外せずにいたが、そろそろ外さないと、恥ずかしい。
一瞬どきりとしたけれど、あんなかっこいい人が私に手をふるわけがない。
きっと私の後ろに知り合いの女の子がいるのだろう。
後ろを確認したいけれどそれも自意識過剰な気がして恥ずかしい。
ずっと視線を外さなかったり、喜んだ顔を見せても、恥ずかしい。
スッと無表情になってそのまま顔をイケメンからそむける。
すると、誰かに強く腕をひかれた。
「ちょっ、まってまって!冷たいよ〜!」
「は、え!?私!?」
「君に決まってるじゃ〜ん!こんなカワイイ子に出会えて俺ラッキー!」
「ちょ、え、まっ 私 は」
ナンパでも頭がおかしい。
私を?なんで?
新たなマルチ勧誘?
疑いの目を向けると、彼は肩をすくめた。
「俺、中学生。変な勧誘とかじゃないよ」
「ちゅっ...!?」
ちゃらくて、軽くて、とにかくイケメン。
そんな中学生との恋が、はじまったのだった。
シンデレラ・ライフ
(ショタコン...?)