短編 | ナノ


▼ まるでジャスミンの花のような、

大学が終わり、気持ち早足で駅へと向かう。
就活のガイダンスでスーツを着てきたが、本当に歩きにくい。

今日は俳優であり歌手でもある仁王雅治のニューアルバム発売日だ。
約一年ぶりのアルバムで、もちろん予約してある。
はやく駅の中にあるCD屋で受け取らなければ。
さらに足をはやめると、カバンについた仁王雅治の写真入りストラップが揺れた。

「そこの女の子、ちょっといいかな?」
「え、私?」

波打ったロン毛がむさくるしい、ラフにもほどがある格好の男が声をかけてきた。
茶色のサングラスと、中年特有の酒っ腹がうさんくささに拍車をかけている。

「そうそう。君かわいいね。今ドラマのエキストラが足りなくなって、探しているんだけど、どうかな?報酬ははずむよ」
「いえ…いいです」
「そんなあ。もしかしたらスカウトされちゃうかもしれないよ。しかも日給三万円」
「いや…本当いいです…」

日給三万円。
うさんくさいにも限度がある。
ここまでくると笑えてしまう。

「おっ。笑った顔はさらに可愛いね。本当にどう?」
「いいですってば…」
「仁王雅治もこのままじゃ困っちゃうんだよ」
「えっ」
「仁王雅治。知らない?」
「いや…知ってますけど…」

まさかの雅治のドラマだとは。
エキストラってつまりまわりでちょっとした演技をするだけだよね?
うさんくさいけど…ひと目でいいから雅治を近くで見てみたい。

「ここから近いよ」
「いきます」

サングラスの奥が笑った。


---



「ここですか…?」

新宿のビル街。
その中のひとつの前に、連れてこられた。

「ドラマの撮影はあと一時間後にはじまるから、それまで事務所で休んでいって」
「はあ」

中に入り、エレベーターに乗る。
男の太い指が四階を迷いなく押して、私はそれをぼうっと見つめた。

「ついたよ」

扉が開いた先は、想像していたものよりずっと殺風景だった。
撮影小道具がインテリアのように散らばっていて、赤いソファーが不自然に中央に配置されている。

「…」
「驚いたかい?事務所で撮影することもあるんだよ。気にしないで」
「…」

でもこれは異常だ。カメラマンが三人ほどいるし、なんだか、「今から撮影が始まります」かのような…。
もしかして事務所で撮影するのかな。
てっきり野外撮影だとばかり思っていたけれど、それならこの状況が説明できる。

「幸村くんはまだか?」
「今向かってるようです」
「OK、じゃあオープニングからはじめるか」

幸村くん、とは誰だろう。
この事務所に所属している俳優さんだろうか?
私は俳優さんにはけっこう詳しい方だけれど、そんな名前きいたことない。

「今から動画をとりたいんだけど」
「え、動画…ですか?」
「そう。せっかくだから、スカウトも同時にしたいと思ってね」
「スカウト…」
「社長に見せてからはじめてスカウトだからさ…このカメラの前でかるく自己紹介と、質問に答えてもらっていいかな?社長に見せるだけだからさ」
「はあ…」

とても無理です、といえる雰囲気ではなかった。
扉の前にはスーツで黒のサングラスをかけたガタイのいい男がたっているし、目の前にはこのうさんくさい男がいる。なんだか囲まれているような錯覚を覚えて、怖くなった。

「はい、じゃあ…まず自己紹介から」

ジジ、とカメラが回る音がする。
声が震えたが、なんとか自己紹介を終えた。

「はい、ありがとね…。じゃあ、好きな食べ物は?」
「えっ…?え、えっと…美味しいものなら何でも...」

「今日はどこかに行ってたの?」
「え、はい...大学に...」

「緊張してる?」
「は、はい...まあ...」

なんのためにこんなことをしているんだろう。喉がカラカラとかわいて、冷や汗がとまらない。

「こんにちは」

そこに、透き通った綺麗な声が響いた。

「おお、幸村くん。やっときたね」
「遅くなってしまい申し訳ありません」
「いや、いいよ。スーツもちゃんと着てきてくれたようだね。じゃあさっそくやってくれていいから」
「はい」

あらわれた男は背が高く、それはそれは綺麗な顔立ちをしていた。
こちらをちらと見やって、そのまま微笑む。
慌てて会釈を返すと、男はさらに笑みを深めた。

「こっちきて」
「え、あ、はい」

グイと手をひかれて、真ん中の赤いソファへと連れて行かれる。
綺麗な顔立ちをしているのに、力がわりと強くて、少しよろけた。

ドサリ、とソファに組み伏せられる。
え、と思った瞬間キスをされた。

「ん、む…!」

ドン、と胸板を叩くが、男はビクともしなかった。

「ん、ん、んー!」
「ん…」

私の苦しい声とは違い、幸村さんは綺麗な声を漏らした。
苦しさのあまり口を開くと、ぺちゃりと幸村さんの舌が入ってきた。

ちゅく、ちゅるりと舌を吸われ、甘噛みされる。
そのまま幸村さんの舌は口内を舐めまわすように一周して、最後にぷちゅっと音を立ててキスを終わらせた。

「はあ、はあ、なに、すんですか…!」
「フフ…慣れてなくてかわいいね」
「なっ…」

漏れた唾液を拭おうと手を動かすとすぐさま掴まれて組み伏せられる。
唾液は顎から首にどんどんと流れていき、不快感に眉をひそめた。

「唾液、気になる?」
「…」

睨みつけると、幸村さんは楽しそうに笑った。

ぐっと顔が近づいて、一瞬ドキリとする。
本当に綺麗な顔だ。
高い鼻が私の鎖骨にこつりと当たって、そのまま上へと移動する。

「ひゃ…!」

幸村さんは首に流れ着いていた唾液をなめはじめた。
べろりとまるで私を食べるように念入りに舐めつける。
ザラザラとした舌の感触がリンパ腺の上を行き来して、なにか悪寒のようなものがゾワリと体を駆け巡った。

「いや…やめて…」

怖くなって懇願する。
対する幸村さんは何も言わず、相変わらずの笑顔で今度は胸の突起を舐め始めた。

「ひっ…やだ…ああっ」

片方を舐めて、片方をつまむ。
左右から違う愛撫をされて、紛れもない快感が股間を刺激した。

「いま、下、きゅんとしたでしょ」
「…」
「素直じゃないなあ」

舐めていた片方の胸を今度は噛み始める。
グッと埋め込まれた幸村さんの歯が、容赦なく私を追い詰めた。

「結構感度いいんだね。でもまだ早いよ」
「はあ…はあ…」
「うん、もうパンツぐしゃぐしゃ。スーツってエロいね」

耳元で囁かれるとたまらない。
綺麗な顔を見るとなんだかほだされそうで、顔をそむけた。
すると、さっきまで無かったカンペと思しき画用紙が、視界に入る。


「素人就活生、スーツで犯される!」


「フフ、驚いた?」
「…AVの、撮影...?」
「大方、ドラマエキストラとか言われて来たんだろう?残念だったね…」

そう言って幸村さんは私のスーツのスカートをまくりあげる。
そのままストッキングにかじりついて、引き裂いた。

「あああっ…!」

まるく穴があいたところに舌を這わされて、声をあげてしまった。
部分的にさらされた素肌はいつも以上に敏感になっている。
はやくすぐ近くのあそこに舌を這わせてほしくて、膣がきゅんきゅんと鳴くのが感じられた。

「君は素質があるよ。犯されているのに、こんなにパンツを濡らすなんて。とんだ変態だ...」
「いや...っ!」
「ああ、いやらしい臭いだね...」

幸村さんがパンツをおろす。
糸がひいているのを見て顔が赤くなる。幸村さんは吐息で笑って、指をさしこんだ。

くちゅり、と音が耳を犯す。
幸村さんの指はそのまま奥まで迷いなく入ってきた。

「すごい。奥からどんどん液が溢れ出してるよ」
「言わないで...」

幸村さんの指がナカでくっと曲がった。
カリ、と爪で膣壁を刺激される。
幸村さんは何度も何度も爪で壁をひっかいて、その度に体に弱い電流のようなものが走った。

「っふ...ぐす...」
「泣かないで。君が泣いたら俺も悲しいから」

そう言って空いている方の指で幸村さんが私の涙をぬぐう。
濡れた視界にうつる幸村さんは、言葉通り悲しそうに眉を下げてはいるが、目だけは獰猛に光っていた。
はやく虐めたいとでもいうかのようなその様に、ぶるりと悪寒が走る。

見た目は綺麗だけれど、この人は間違いなく人を貶める悪魔だ。

もう抵抗をあきらめて、だらりと腕をソファーから投げ出す。

幸村さんの指がナカを引っ掻く度に私の体はビクリと震えたが、それは刺激にしてはあまりにも弱すぎた。
ゾワゾワとしたなにかが身体中を駆け巡って、焦点があわなくなる。

もういっそ殺して。

ぼやぼやした視界に、塞がらない口、たらたらと流れる唾液が、私のプライドがすでに幸村さんによって崩されていることを示していた。

ああ、もうだめだ。
意識が朦朧としてきた。

「起きて」

幸村さんはそう言うと、クリトリスを思いきり摘まんだ。

「あっ...はっ...!?あが...」

目の前に火花が散ったような刺激が私を襲う。
今までのゆるく遠回しな刺激があいまって、一度大きくイッたあとも間隔を置いてビクンビクンと震えた。

「はぁ、はぁ、はぁっ...」
「フフ、おかしくなっちゃいそうだった?」
「はぁっ...はぁっ」
「大丈夫。君はもうおかしくなってるよ...ほら、ちょっとさわっただけで」

幸村さんの指がスッと私のふとももを撫でる。
瞬間、クリトリスがひくりと震え、膣がキュッと締まったのが感じられた。

「こんな状態で、ナカ、挿れたら...どうなっちゃうんだろうね?」
「い、いや...やめて...だれか、」
「だれも来ないよ。諦めて、降参するといい」
「いやだ、いや!」
「怖いよね。わかるさ、感じすぎるのが怖いんだろう? でも大丈夫。知らない世界を知るだけだから」

そう言って、幸村さんは一気に雄を挿入した。
ぐちゅ、といやらしい音が響いたあと、パァンと肌のぶつかる音が追随する。

奥の奥まで幸村さんは入ってきていた。
先端が容赦なく子宮口をえぐる。

「あああああああっ!!!」
「っは、すごいね。一気に奥まで入れたよ。気持ちいい?」

幸村さんが中に自身をおさめたまま、私に覆いかぶさってくる。
ぽた、と頬に幸村さんの汗が落ちてきた。
そのまま幸村さんは私の耳に口を寄せる。


「俺は、気持ちいいよ」


顔から火が出たかのような錯覚を覚えた。
幸村さんのやわらかい髪が顔にかかる。
幸村さんは満足そうな顔で私の耳を舐めはじめた。
ぴちゃりという音がより近くに聞こえて、もうしにそう。

「あは、舐める度に締め付けてくるよ。...動いてほしい?」
「っ...」
「言わないと、動けないよ...」

そう言って、幸村さんは耳を舐めることを続行する。
もうこの行為自体をはやく終えてほしくて、幸村さんの厚い胸板に手を添えた。

「うご、いてくださ、」
「...そう可愛くおねだりされちゃ、仕方ないな」
「ぁぁぁあっ!?」

ズン、と幸村さんは深く深く突いた。
私の腰を持ちながら、体勢を変える。
いわゆるバックという形になって、ソファにべたりとうつぶせになり、腰だけ上げた。
汗でソファの革がべたりと吸い付く。

パン、パン、とリズムよく音が響く。
ずりずりと内壁を幸村さんが掻く度ぶわりと鳥肌が体に走った。

幸村さんの挿入は速くて、深くて、もう気持ちよさしかなくて、何もわからない。
目の前がチカチカして、すべてが白くなる。
幸村さんが言っていた「知らない世界」を見たような気がした。





---

「お疲れさま。これ、謝礼ね」
「...」
「幸村くん、次の撮影いくよ」
「はい」

うつろな目で、手に握らされた謝礼を見つめる。
あんな、あんなセックスをされて、これから幸村さん以外に満足できるのだろうか?

疲労感の中に今も感じるあの快感。
綺麗に洗われた膣がきゅんと鳴った気がした。

「フフ...そんな顔しないで。また抱きたくなっちゃうだろ?」
「...」
「なに、俺に抱かれたいの?犯されたのに、もう欲しがるなんて...」

驚いた顔で幸村さんが私の顔を見つめる。
しばしその時間が続いた後、幸村さんは綺麗に笑った。

「いいよ...今度はもっと時間をかけて愛してあげる」

そうして、私は幸村さんに取り込まれたのだった。


its like JASMINE
(花と毒)


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