綺麗なひと | ナノ


▼ デンファレ

最初は存在を認知されるのが怖くて、距離をおいていた。でもそれは叶わず、すっかり幸村くんに1クラスメイトとして認識されている。

これは喜ばしいことなのか、否か。
幸村くんと話すことができて嬉しい気持ちと、恥ずかしい気持ちがせめぎあっている。

私は未だに顔を見られるのが恥ずかしく、怖い。
だから、私から話しかけることはほとんどなく、隣の席となっても私と幸村くんの会話数は依然として少ないままだった。

遠くから何の心配もなく見つめていた頃とは全然違う。
こんな気持ち、私はしらない。
加速するように自分が嫌になる。

「もう、5限か...」

授業どころではなくて気付かなかった。
これから毎日、こんな感じなんだろうか。

と、隣から鈴を転がしたような声が聞こえた。

「幸村くん、次の体育、テニスだよ!」
「え、そうなんだ。知らなかったな」
「うん!幸村くんと同じチームに入れるといいな」
「はは、ありがとう」

いいなあ。

私も、あんな風に幸村くんと話したい。

まつげの長い、くりっとした目を視界の端でとらえながら、私は教室をあとにした。


---


グラウンドに出ると、テニスネットを張っているクラスメイトの姿がちらほら見受けられた。
私もなにか手伝わないと、と思い辺りを見回す。
重そうにネットを引きずっている女子を見つけて、すぐさま駆け寄った。

「手伝うよ」
「ありがとう」

名前もしらない女子だった。同じクラスといえど、まだまだ知らない人ばかりだ。

「あの...名前は、何て言うんですか?」
「え?私? 私は、山田みゆき。あなたは?」
「私は苗字名前。宜しくね。みゆき...でいいかな?」
「うん、いいよ。宜しくね、名前」

このクラスになって、はじめての女の子の友達だ。
嬉しくなって、思わず顔が綻ぶ。

と、そこで予鈴が鳴りひびいた。
ネットを急いで配置して、集合場所へ走る。
前を走るみゆきちゃんは足がはやくて、ちょっとだけ羨ましく思った。


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