綺麗なひと | ナノ


▼ スノーフレーク

今日から授業である。

とはいっても、授業の前にSHRがあるわけなのだが。

「いまから席をまわっていくぞ!」

担任がくじが入っている箱を抱えながら叫ぶ。
高校生にとって席決めというのは大変重要である。
担任の叫びはむなしくもクラスのざわつきによって打ち消されてしまった。

かくいう私もこのくじびきにかける想いはみんなにひけをとらない。
絶対に、一番うしろ、窓側。
それか、真ん中の列の、一番うしろ。
とりあえず最後列は譲れない。

「ほら、次はお前の番だ。苗字。くじを引いたらそれに名前をかいて持っておくように」
「...!」

ごくり、とつばを飲み込んで、勢い良く箱に手を突っ込んだ。


---


「いちばん、まえ...」

くじをひいて、すぐさま黒板を見た。
紛う事なき最前列。涙が出そう。

「おら、移動したら各自自由に過ごしていいぞ。SHRはこれで終わりだ!気を付け、礼!」

それだけいうと、担任はさっさと職員室へ帰ってしまった。
仕方なく荷物を背負って呪われし席へ移動する。
どすりと音を立てて机に荷物をおくと、澄んだ声が聴こえた。

「やあ。苗字さん」
「え、あ、...幸村、くん...!」
「ふふ。これから宜しく」

まさか、まさか、幸村くんが隣だなんて!
どうしよう。どうしよう。
嬉しい。

「う、ん、宜しく...」

ばかみたいな話だが、私の目には涙が滲んでいた。




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