an onlooker | ナノ


▼ 05


柳生と手をつなぎながら校内を歩きはじめて10分。
私は来賓用のスリッパを履いて、右手に靴を持っている。
つまり左手に柳生の右手が重なっているわけなんだけど...。

手汗がひどい。

私の。

もとから柳生の手は汗ばんではいたけれど、私はそれ以上の汗をかいている気がする。
緊張のせいで全身の穴と言う穴から尋常じゃない汗が噴き出て止まらない。

だって、男の人と手をつなぐなんて、体育祭のフォークダンスくらいだったんです。
しかもつないでる人はあの柳生さん。触れる程度のつなぎ方じゃなくて、がっちりつないでいる。普通、中学生は照れるものじゃないの...。

「どうかしましたか?」
「いやっ...広いなあと...」
「学校が大きいですからね。もう少しです。頑張りましょう」
「あ、ありがとうございます...」

うっ。柳生優しい。
惚れそう。

そんな紳士柳生と歩くこと15分。
階段を何段かあがると、長い廊下に出た。

「つきました。ここが職員室です」
「おお...」

さすがマンモス校。
職員室まで横に長い。
綺麗に磨かれた廊下は、清掃員がやっていたりするのかな。

「ありがとうございます」
「いえ、大丈夫です。困っている人を助けるのは、紳士として当然のことですから。
それでは私はここで失礼します。アデュー」
「あっ、は、はい!本当にありがとうございましたっ!」

ガバッと深くお辞儀して、柳生の後ろ姿を見送った。


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