▼ 01
「夢は平凡か傍観がいい…」
と夜な夜な夢サイトを漁っていたけれど。
まさかトリップするなんて思わなかった!
夢サイトをめぐって、さあ寝ようと目を閉じて、起きたら立海のグラウンドにいた。
グラウンドのすみの、申し訳程度にはえている芝生の上に。
「・・・っわぁ!!!!!」
誰だって、目が覚めて青空が広がっていたら飛び起きると思う。
雲ひとつない晴天だ。
飛び起きた拍子に芝生をぶちぬいたらしく、手にはどろと草がついていた。
「・・・」
さわさわと芝生が風にゆれる。
それが無性にくすぐったく感じて、バッと手を払い除けて―― って
「・・・感じる・・・芝生が・・・!感触が・・・!」
明晰夢とでも言うのだろうか?
それにしてもヤケに感覚がリアルだ。
心臓がドクドクとうるさい。
異世界…?異世界って…そんな。
ホラーでよく見る奴だったらどうしようか。
文字が読めなくて、研究室に連れて行かれて、家にも帰れず、最後には解剖――
「イヤアアアアアアアアアアア!めざめたい!すごくめざめたい!!!」
ブンブンと頭をふったり、顔を平手打ちしたりしてみるけれど、目覚める気配はなかった。
遠くをみるとガヤガヤと喧騒が聞こえる。
こちらから近づかない限りは自分の存在はバレないと踏んでいるけれど、できれば見つかりたくない。なにされるかわからないし…。
そもそもここはどこなのか確認しなければならない。
すると、遠くから声が聞こえた。
常勝――立海大――常勝――立海大――
じょ、常勝立海大コールが聞こえる…!
はしっことはいえ、グラウンドにいるのに学校はとても遠い。
それでも見間違うことはない。アニメで何回も見た、立海の建物だ。
「・・・これは・・・」
今までトリップという可能性は考えなかった。
だって、ありえないから。
夢小説をめぐって、ああトリップしたい、バイトしね、トリップしたいと星の数ほど想ったが、さすがにわきまえてはいたのだ。
「ありえない」、と。
今でも少し半信半疑ではある。
でも、目覚められない以上、いつまでもここにいるわけにはいかないと思う。
そろっと立ち上がり、私は喧騒の聞こえる方へと近づいてみることにした。
(スネークの、ダンボールが欲しい・・・)
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