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幸村くんの集合命令で、レギュラー達は屋上にすばやく集まってきた。
赤也はまだ菓子パンを食べ終わってないらしく、口をもごもごさせている。
「やあ、皆すまないね」
「急にどうしたんですか?」
柳生がメガネを指の腹で押し上げる。
幸村くんがふふふと可愛らしく笑った。
「皆まだ苗字さんに謝ってないだろう?」
「まずはお前からだ、赤也」
「お、俺っスか!? 大丈夫っすよ、だってコイツさっき怒ってねえっていってたし…」
赤也がこちらをちらりとみやる。そうだろ!?とでも言いたげだ。
いや、そうなんだけど。
「なに、赤也。さっきって?」
「まさか苗字が走りまわってたのはお前から逃げるためか?何かしたのか赤也!たるんどる!!!!!」
「エ!?!?誤解っスよ副部長!」
「キエエ!そこに直れ!」
「あの、ちが…もごっ」
「いいから黙りんしゃい」
「んー!?」
仁王雅治の大きなてのひらが私の口を隙間なく覆う。
しー、と人差し指を整った唇にくっつけて、仁王雅治は不敵に微笑んだ。
「赤也は怒られとくべきじゃ」
「いや、いいの、本当に、」
「おまんさんだけの問題じゃないからの、黙って見ときんしゃい」
「…」
仁王って…
幸村くんが私に悪ふざけしようとした時も止めてくれたし、
案外…
(…紳士?)
すかさず仁王の髪をひっぱる。
ぎゅうと力強くひっぱると抗議の声があがった。
「いた、何すんじゃ!」
「カツラじゃない…」
「…?」
「柳生かと思って」
そう言うと仁王は微妙な顔をして、私から手を離すと自分の頭をさすりはじめた。
「失礼なやつじゃのお…」
「…ごめん」
「じゃあ赤也がしぼられてる間に、次行こうか。ブン太」
「えっ!?」
「え、じゃないだろう。勘違いとはいえ部室に連れ込んだのはお前だ」
「柳正論だ。俺にも謝れよブン太」
「ジャッカルにも謝らなきゃいけねえのか…」
心底嫌そうなブン太がこちらに向き直って、
丁寧に謝罪した。
「ゴメンな」
「い、いいよ、こちらこそごめ…」
「おう」
「えっ」
「許すぜぃ」
「…ありがとう…?」
「じゃあ次は時計回りで謝っていこう」
そうして立海のみんなに順番に謝られて、なんだか不思議な昼休みを終えた。
これでもう立海のみんなに関わることはないだろう。
帰る道を探しつつ、遠くで傍観を続けることにしよう。
そう心に決めて、残りの授業へ急いだ。
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