所謂、僕っ娘です。
名前変換なし。
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 ピンポーン
 と訪問を知らせる気の抜けたチャイムがなる。
 彼が予定よりも早めに着いた事を嬉しく思いつつ、僕は玄関へ急ぐ。


 彼を迎えるために玄関に一番近い、空調を効かせているリビングに居たせいか、
 玄関への道のりという名の廊下がムワっとした感じがした。
 家の中だというのに汗が噴き出てきそうだ。



「よう。」

「おー。ついに来たかー。」

「……ついに暑さで頭のネジ外れたか?激ダサだな。」


 む、失礼な奴だ。
 正直その口癖の方が激ダサだと思う。僕以外にもそう思っている人は、少なくとも一人はいるはずだ。
 ま、言葉には出さないでおくけど。



「非道いな。ま、暑いし上がりなよ。」

「ん、お邪魔します。」

「あ、先に僕の部屋行ってて。」

「おう。」


 氷帝生だからか、意外にも"作法"は正しい。
 ……礼儀正しい人は頭のネジが外れたなんて言わないはず。ま、僕の考え方だけど。
 前回、いや前々回彼を家に呼んだときに気付いた事だ。


 リビングの空調の電源を切り冷蔵庫からをジュース……暑い日だから爽やかな炭酸飲料を取り出す。
 2階にある僕の部屋までが暑い。なので階段を駆け上った。
 予め涼しくしておいた自分の部屋に入り、2つのコップに炭酸飲料を注ぐ。




「あ、そうだ。今日さ亮が来るって言ったら、喜んで母さんと父さん出掛けたから。」


「え、」


「あ、別に嫌ってるとかじゃないから。寧ろ逆。近所に迷惑かけない程度に騒いで良いって。」



 わざとベッドに腰掛けながら言ってみる。

 これは嘘じゃない。紛れもない事実だ。
 母さんはニヤニヤと怪しい笑みを浮かべながら、よく分かっていない父さんを久々のデートと言って連れ出した。
 騒いで良いと言いつつも、ゲームだって盛り上がりに欠るものだったり、心理戦のものばっかだ。家で騒げるものなんてないというのに。





 わざわざ自分から伝える必要性があったのかと問われたなら、答えは否だ。
 手を繋ぐだけで真っ赤な顔をする純情な亮をからかうために言っただけ。
 案の定、顔を真っ赤にして口をパクパクさせた彼の出来上がり。
 予想通り、いや、予想以上に良い反応をしてくれた。
 ふふーん。頭のネジが外れたなんて言ったからだ! と心の中で言ってみる。
 兎に角、仕返しは成功したらしい。




「亮、顔真っ赤だよ。激ダサだな!」

「っ〜〜! 部屋が暑いせいだ!」


 からかうように、いや実際にからかっているのだが言ってみると更に赤くなる顔。
 顔を通り越して耳まで真っ赤だ。
 耳も顔の一部だったっけ。ま、そんな事はどうでもいいけど。。



「かーわーいーいー!」

「おまっ!からかってるだろ!」

「あ、バレた?」



 流石にバレたか。
 ま、顔の赤い亮を見れたので良しとする。



 ふと、亮は何かを決意したような顔をした。
 何を考えているんだろうか。からかった仕返しか?


 考えていたせいか気付かなかったが亮が急接近していた。さっきはおよそ1.5mほどあった距離が50cmほどになっている。



「え?あ?亮?ちょ!近い!亮?」


「うるせー!黙ってろ!」



 そして、距離は0になり、唇に何か柔らかいものが当たる。
 その柔らかいものが亮の唇と気付くまで約3秒。



 ……やられた。きっと、いや、絶対に僕の顔は亮に負けないくらい真っ赤だ。



「顔真っ赤だぜ? 激ダサだな!」

「う、うるさい! 部屋が暑いせいだ!」







 亮だって耳まで真っ赤な癖に、生意気な!











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