掴んだこの手は離さない跡部視点。






久方ぶりに忍足と二人きりで帰る事になった。
幸せそうに忍足の顔が緩んでいる。
普段のポーカーフェイスはどうした?と言われそうなくらいに。


そして、二人きりだからだろうか…
俺は未だに緊張する。
行けるところまで行ったはずなのに。




そこでふと忍足の手が目に入る。
前は手を繋いで帰ったっけ。


あ、なんか、手を繋ぎたくなってきた。
どうしたら良いんだろうか?
手を取ればいいのか…?
…無理だ。恥ずかしくて出来ねぇ。
俺様は乙女かよ、畜生。
前はどうした?
…そういえば忍足から手を取ってくれたのか。



「忍足。」

「なん?」


…。話しかけたはいいものの手を繋ごうなんて言えるか!恥ずかしいじゃないか!



「寒い、何とかしろ。」



あ…。何て可愛くないことを。
忍足からの返事がない。いつも可愛くないことばかりしているから嫌われただろうか…。

ふと忍足を見た。
……。…そうではないらしい。何故かニヤついている。
俺様の声が聞こえないほどに妄想でもしているのだろうか。
何かムカつく。
俺様が隣に居るというのに。



「おい、聞いてんのか?アーン?」


「聞いとるよ。なら、手繋ごか。」



盛大に顔が緩んでいる。
本当に学校でのポーカーフェイスはどうした?
手を繋げるだけで喜んでる俺の言えたものでもないか。



「…誰か来たら離すからな。」


俺はつくづく素直じゃない。
可愛くない言葉を言いつつ手を握った。
この時の忍足の幸せそうな顔と言ったらもう…





意味はない。
ただ、握っていたいから握っておいてやる。





タイトルは雪華-snow flower-さんからお借りしました。



男前な跡部を書くつもりだったのにどうしても乙女になってしまうこの現象。