部活後、俺は部室にて部誌を書いている。一人一人の事を丁寧に、鳳のサーブの調子が良かった。向日の体力の配分が上手くなっている。準Rの1年の篠崎のボレーとスマッシュの精度が最近、急に伸びてきたなど、普通の事を書く。そこで、胡散臭い丸眼鏡の優男…忍足侑士の事を思い出した。あいつが優しくする相手に嫉妬する、俺。吐息の多い(…凛は18禁エロボイスと呼んでいるが)声で名前を呼ばれると心地よいし嬉しい。触れられた所から広がる熱。そういうのにはどう対処したらいいんだろうか。ふっと、先日眉間を触れられた事思い出すと、触れられた訳でもないのに熱が広がる。

ああ、俺らしくねぇ。俺様と言われいる俺は意外と女々しいみたいだ。


「ん?跡部?何百面相しとるんや?」


この心地よい吐息の多い声…聞き違える事はない。今まさに考えていた男。忍足侑士だ。


「アーン?少し考え事だ。」


まさか、忍足の事考えていたなんて言えるわけがない。というか、何故からここにいる。ラブルス共は仲良く帰ってたし、ジローも久々に滝と一緒に羊の店と行くんだ!と言っていた。こういうときの忍足は確か…


「ホンマ跡部、最近考え事ばっかやな。相談とか有ったら何時でも聞くで。」


本人に本人の事を相談出来る訳ないだろう… この男は鋭いんだか鈍いのか分からない。


「お前に相談する程のことでもねぇよ。お前は自主トレか?」


帰る相手がいなさそうな時は、自主トレをして俺と帰っていたはず。


「ん、せやで。あぁ、けど15分前くらいからいるで?」


な ん だ っ て !?
心を読まれたんじゃねぇか?というか気配にすら気付かない程考えていたなんて。


「何時から居たんやろって顔しとったで?俺に気ぃ付かん程考えとったんやな。ホンマに何時でも相談乗るで?」


「気にする程のことじゃねぇよ。まぁ、その時は相談してやる。」


本当に素直じゃない。隠すために不機嫌な顔をして。忍足が心配してくれるなんて嬉しいに決まってるじゃないか。


「また眉間に皺寄とっるで」


別嬪さんが台無しや〜 と言っている声を聞き流しながらも幸せを噛み締める。くそ、嬉しいじゃねぇか。このもっさり丸眼鏡!伊達!足フェチ!ロマンチスト!優男!イケメン!


「んー、やない。侑ちゃんが伸ばしたる!」


ふざけているだけなんだろうが、侑ちゃんって17にもなった男子高生に使うもんじゃねぇと思うが忍足が言ってもあまり見苦しくないのが癪だ。くそ、イケメンめ!それと、何で無駄に笑顔なんだ。お前の従兄弟の部活の部長に無駄や!って言われるぞ。


「は?キメェ。自分で侑ちゃんって言うな。」


しかし、イケメン馬鹿野郎と言うのも癪なので悪態で誤魔化したが、忍足は爆弾を投下した。なんと、頬を引っ張ってきたのだ。


「はひふんは。(なにすんだ)」


痛い。俺様の肌が傷が付いたらどうするんだ。…でもそれ以上に忍足の触れている所が熱い。そして、テニスをやっている時や後よりも心臓がバクバク言っている。


「堪忍な。跡部はもうちょい力抜き?頑張りすぎや。」


そう言って手を離した。なんで忍足はこんなに優しいんだ。


「分かったよ。」


これ以外に返す言葉が見付かんねぇ。ああ、認めてやるよ。たぶんじゃない本当にコイツが好きだ。


だってこんなにも心臓が煩い

(顔赤いで?大丈夫か?)
(っ、るせぇ!)
(堪忍。強お引っ張りすぎてしもたな。湿布いるか?)
(……)