セスさんから2
○内容はクザサカの現代パロディです。
○二人のイメージとしては20代前後(原作で例えると41巻(中将ぐらい))
○クザンはともかく、サカズキのイメージが壊れて(崩れて)います。
それでも大丈夫ですよと言う方のみ下からどうぞ。
( 意地悪な年下と悪戯な年上 )
いつも意地悪されているんだ。
たまには悪戯しても良いだろう?
〜★☆★☆★〜
『では、此にて本日の講義を終わります』
教授が言い終わるとほぼ同時に、学生達がバラバラと席を立ち、講義室を出て行く。
サカズキもノート等の教材をまとめて鞄にいれて席を立ち、講義室を出た。
〜★☆★☆★〜
『あれぇ〜サカズキィ〜』
『…ボルサリーノか』
講義室を出て暫く歩いていると、後ろから声をかけられた。
『相変わらず真面目だねぇ〜』
『それが当たり前だ』
『そうかぁ〜い?サカズキは真面目すぎると思うけどぉ〜』
サカズキとボルサリーノはクザン同様、昔からの知り合いだが、二人は学部が違う所為かあまり話す機会がなかった。
唯一あるとすれば、こうして玄関(下駄箱)に向かう時ぐらいだろう。
『そう言えばぁ〜クザンは元気かぁ〜い?』
『あぁ………喧しい程にな』
『今の間は…干渉しないでおくよぉ〜』
『家事も仕事もしないで家でダラケている…全く私の気も知らないでな』
『まぁまぁ〜元気なだけ良いじゃないかぁ〜』
『まぁ…そうだな』
色々と話している内に、何時の間にか玄関に着いていた。
『そういやぁ〜明日休みだけどぉ〜…休みの日は何しているんだぁ〜い?』
『………』
『…もしも〜し』
『…苛められている』
『…おぉ〜…』
『…別に今に始まった事じゃない』
『たまには“やり返し”でもしたらどうだぁ〜い?』
『…“やり返し”?』
『君の方が年上だしぃ…ねぇ〜?』
『…分かった』
靴を履き替え、大学の入口(門)まで歩いた。
『じゃあこっちだからぁ…またねぇ』
『あぁ…またな』
サカズキはボルサリーノとは逆方向へ歩き出した。
〜★☆★☆★〜
帰路の途中、サカズキは家の近くにあるスーパーに寄った。
『さて…』
今日の晩飯は何にするか。
『あいつの料理は壊滅的だからな…』
一度クザンに料理させた事があったが、あれは百人中百人が“料理(食い物)じない”と言う様なものだった。
『…シンプルなもので良いか』
普通に野菜炒めとかでも…
『…ん?』
そんな事を考えていると、サカズキの眼にあるものが止まった。
『…椎茸』
4、5個ずつ入った袋が山積みにされて売られていた。
もしもあいつがこの場にいたら変な事を言いそうだ…
長年の勘がサカズキの頭に結果を出した。
『…そういえば』
サカズキはふと思い出した。
『あいつはキノコ類が苦手だったっけ…?』
確か同棲したての頃、晩飯にキノコ類が入った料理を出したらクザンにギャーギャー文句を言われた様な記憶がある。
−『たまには“やり返し”でもしたらどうだぁ〜い?』−
暫くその場に立っていると、先程のボルサリーノの言葉が頭に蘇る。
いつも意地悪されているんだ。
たまには悪戯しても良いだろう?
サカズキは椎茸の袋を幾つかカゴに入れた。
〜★☆★☆★〜
『…ただいま』
返事が返ってこない。
『仕事か…』
サカズキはさっさと靴を脱ぎ、リビングに向かう。
ダイニングテーブルの上に先程買った物を並べ、冷蔵庫に入れるものと入れないものを分ける。
冷蔵庫に入れるものを綺麗に入れ、入れないものを台所の端に置いていると電話が鳴った。
『…もしもし?』
『あ?サカズキ?オレだけど』
相手はクザンだった。
『…何だ?』
『今日は少し遅くなりそうだから晩飯はいつもより遅めに作って良いよ』
『…分かった』
『じゃあそういう事で』
『あぁ』
プツッと電話が切れた。
サカズキは受話器を戻し、ふと時計を視る。
午後6時47分。
晩飯は7時半ぐらいで良いか。
そう思いサカズキはソファに座りテレビの電源を入れた。
〜★☆★☆★〜
『サカズキ〜ただいま〜』
『クザンか…おかえり』
『何か良い匂いがする』
『もうそろそろ出来るから待ってろ』
『分かっt『座る前に手洗いうがいをしてこい』…了解』
クザンは渋々風呂場の方へ行った。
その間にサカズキは料理を皿に移し、ダイニングテーブルに並べた。
『腹減った〜』
『随分早いな』
『サカズキの為なら』
『…そうか』
クザンが椅子に座るとほぼ同じタイミングでサカズキは最後の料理を並べた。
『もう食べても良い?』
『あぁ、召し上がれ』
よほど腹が減っていたのか、クザンは『いただきま〜す』と言い箸を取った。
サカズキも椅子に座り『いただきます』と言った。
『…ねぇ…サカズキ』
『…何だ』
『…苛め?』
『何がだ』
今日の晩飯は炊きたてのご飯に野菜炒めと、とてもシンプルなものだ。
『どうかしたか?』
『…これ』
そう言ってクザンが箸で指したのは、野菜炒めに入っていた椎茸だ。
『食えるだろう?』
『…俺が昔言ったの忘れたの?』
キノコ類は食えないって…
クザンはまるで目の前にピーマンを出された子供のような顔でサカズキに言った。
『…すまない。忘れてた』
『…やっぱりねぇ』
…嘘なんだがな…
サカズキは心の中でそう呟いた。
『どうしても食べられないのか?』
『うん、無理。百万出すって言われても絶対無理』
『…そうか』
サカズキはクザンの答えに対して溜息を吐いた。
とても残念そうに視えるように。
『…サカズキ?』
『クザンの為に作ったのだがな』
サカズキはちらりとクザンの目を視て、これもまたとても残念そうに視えるように言った。
サカズキと目が合ったクザンはドキッとした。
サカズキから目を合わせて何かを言われた事があまり無いからだ。
『…どうしても食べてくれないのか?』
『あ…いや、何と言うか…その』
『そうか…食べてくれないのか』
『え…あ…サカズキ?』
『明日は休みだからな…食べてくれたら何でも言う事聴くのにな』
“何でも言う事聴くのにな”
その言葉がクザンの頭の中でグルグルと何度も繰り返される。
『…食べてくれないなら仕方が無い』
『…え?』
何時の間に食べ終えたのか、サカズキはさっさと自分の食器を台所へ運んでいった。
一方クザンは料理に手付かずのままだった。
『ね…ねぇ…サカズキ』
『先に寝室へ行ってる。先に寝てほしくないならさっさと食べ終えろ』
言葉だけを聴けば、何時ものような厳しい口調。
しかし、顔は何時もよりも優しく、唇は微笑みの形をしている。
『…じゃあな』
『…あぁ』
クザンはサカズキが寝室に消えるまでその背中をずっと視ていた。
『…よし』
寝室に消えた後、クザンは視線を料理へ向けた。
子供の頃は自分を馬鹿にしているような気がした椎茸が、サカズキの料理の所為だからか、自分よりも弱々しく視える。
『…食べますか』
クザンは一度深呼吸をしてから料理を口に運んだ。
〜★☆★☆★〜
−オマケ−
『サカズキ〜』(バフッとベッドに飛び込む)
『もう食べたのか』(予定よりも早くてちょっとビックリ)
『俺初めて椎茸全部食べたわ』(自分でも意外)
『それは良かったな』(ベッドに寝転がる)
『でしょ〜…そういえばサカズキ』(サカズキの横に寝転がる)
『…何だ?』(またちらりとクザンを視る)
『何で椎茸入れたの?』(実は少し怒っている)
『…』(クザンから視線を外す)
『…サ〜カズ〜キさ〜ん?』(顔は笑っても眼が笑ってない)
『…貴様が何時も私を苛めるからだ』(顔が少し赤い)
『…あらら』(え?俺サカズキの事苛めてたっけ?)
『…』(“意地悪してくる”にした方が良かったか?)
『まぁ…可愛いじゃない』(ぎゅっとサカズキに抱き付く)
『…ふん』(同じくクザンに抱き付く)
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(10.07.04)