白染さんから



『あれ?もしかして今日って吉日?』


なんて軽いことを考えながらいま正にぶっかけられたワインをペロリと舐めながらどうしたものかと首をひねる。
いやいやワインは飲み物で、そしてぶっかけられて喜ぶようなそんな性癖は自分にはない・・・うん、ないのだけれど明らかに怒りを露にしている目の前の相手の可愛さといったらどうしてくれようか。

「・・・馬鹿もんが・・・っ!」

馬鹿といわれるようなことをした覚えはないのだが少々気難しい愛しの彼は大層ご立腹だ。だからといって理由も分からず謝るなんて愚かなことはしない。
ああ、白のスーツがワインに染まっていく。(最悪なことに赤ワインだ)

「あのさ。おれ、こんなことされる覚え本当にないよ?」
「どの口が言うんじゃ!」

はいワイン二発目きましたー。
避けるともっと怒るので大人しく受けてますけど、もうこれぶっかけられてるっていうか浴びてるの方が正しいと思うのよ。目に入らないようにするの大変だわ。
おれが飲んでたのをわざわざ使ってくれる辺り、まだ冷静な判断ができてる証拠かな。本気だったら自分の手前にあるワイン瓶使えば早いもんね。
それにしても自室で良かった。これがもしどこかのレストランとかだったら新聞の一面飾っちゃう大事件だよ。

「・・・三日前の正午。本部の裏庭。」
「へっ?」
「なにをしちょったか・・・覚えてるじゃろう。」

三日前。正午。本部の裏庭。
その単語をキーワードに記憶を辿ったクザンは「あっ」と言い、その反応にサカズキは苦虫を噛みつぶしたように顔を歪めた。
確かにその時間と場所に覚えはあった。だがそれで全てを理解してしまった途端に頬は緩み、急にサカズキのことを抱き締めたくなってしまった。
だが伸ばした腕は無常にも叩き落されてしまい心が折れてしまいそうなほどヘコんだ。

「言い訳は聞かん。」
「うん、言い訳なんてしないよ。」

そう答えたら泣きそうな顔をされてしまって悶絶してしまいそうになる体を押さえ込むのは大変だ。(反則だ!)
数回深呼吸をして、そして顔を上げて、とびっきりの笑顔を作る。
サカズキがこの笑顔にすこぶる弱いなんてことはずっと知っているんだから。

「その時間、その場所におれは給仕のお姉ちゃんといた。」
「・・・そうじゃ。」
「それで荷物を受け取って、」
「楽しそうに・・・二人で歩いちょったじゃろうが!!」

ダンッ、と机の上に振り下ろされた拳。半分以上残された食事の皿とワインの瓶が激しく揺れた。
ヒステリックに怒っているのに、泣きそうな顔をしているくせに、涙が出ることのない赤い瞳におれは緩やかな笑みを浮かべた。

「あの荷物ね、それだよ。」
「・・・な、んじゃと・・・?」
「だから、そ・れ。」

おれの指差した先には先ほどから酷い目にあっているワイン瓶。ほとんど中身が残ったままのそれは先ほどの揺れの余韻かまだ少し左右に揺れていた。
唖然としたサカズキから離れキッチンに置いてある箱と包装紙を持ってきて渡せば、見覚えがあるのだろう彼は顔を真っ赤にさせたり真っ青にさせたり忙しそうだ。

なるほどなるほど。やっぱり今日は吉日のようだ。

だって一日でこんなに色々なサカズキの表情を見られることなんて滅多にないもの。

「・・・すまん、かった。」

謝罪の言葉にため息をつけば相手の肩がびくりと震えた。箱と包装紙を握ったままの手も震えているのが見えてもう一つため息。
先ほどまでの強情さはどこにいったのか分からないほどしおらしくなったサカズキにもう一度腕を伸ばせば、今度は拒否されることなく彼に触れることが出来た。

「責任、とってよね。」

そう耳元で囁いて腰に腕を回してスタスタを歩き出せば困惑したサカズキと目が合う。
目をまあるくしちゃって・・・本当にもう、なんて可愛いのだろう。
そして行き先に気付いたのか慌ててブレーキをかけようとするがそんなのおれが許すわけないでしょう。

「いまから風呂入るから服脱ぐの手伝ってよ。」
「ちょ、クザン!?」
「ワインでおれの服台無しだし・・・それに。」

可愛いヤキモチに欲情しちゃった、と言えば小さな声で「・・・馬鹿・・・もん・・・」と安堵を含んだ満更でもない声がした。


絵チャの際に話が盛り上がって白染さんから頂いたんだぜ!
ワインぶっかけるとかサカズキ乙女だハァハァ。
クザン。私が代わりに悶えておくから安心しろ。(^p^)
本当にありがとうございましたっ!
これを励みに頑張りますよ!フォォォ!
はい。失礼しました。


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(10.07.04)




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