里流さんから
海賊がとある島に拠点を置いて暴れている、という報告があったので俺とサカズキが駆り出された。
同じグランドライン上だけど、普通に行くと時間がかかるので一度凪の帯を越えてからの航海。
航海を始めて1週間、雨季にかかっているのか雨が降りつづいて3日が経った、外の見張り以外は皆船内でいろいろな作業をしていた。
逃げ場のない海の上、仕方なく、サカズキがぬかりなく、持ってきた書類と向かい合っている。
つまんないな、とか思ってぼーっとしていると扉がノックされた。それに続くサカズキの声。
「クザン、開けてくれ。」
「ん? はいはい。」
なぜだろうかと首をかしげつつ、立ち上がって扉を開けた。
扉を引けば、洗濯籠を抱えたサカズキとの対面。
「何それ。」
「洗濯物に決まっちょろうが。」
「ハイ、ソウデスネ。あれ、何時もの上着は?」
「この雨じゃからな、まだいらいちょらん。」
退け、と空いている足でジェスチャーを示すサカズキのために一歩避けると、床に籠を置いて壁から壁へと紐を張り巡らせ始めた。
「まさか、ここに干すの?」
「そのまさかじゃ。……む、たわんの。おい、これをそこにきびっちょけ。」
「はいはい……。」
紐の先を受け取り、指さされた場所に結んだ。
その間にもサカズキはどんどんシャツ、靴下、あまつさえは俺の下着まで干しはじめた。
その様子を見て、サカズキって結構家庭的、と笑っているときびしい視線が飛んできた。
「よいよ、お前は……。」
「何?」
「ぼーっとしちょる奴があるか!! てごぉせい!!」
これをたため、と重ねていたかごから乾いたものを投げられた。
俺の小物だったらしく、下着が良い感じに俺の顔面にヒットする。
「ちょっとパンツ投げないでよ。汚いな。」
「洗っちゃるじゃろうが。」
「気持ちの問題だって。」
受け取ったそれを衣装箪笥の引き出しへと放り込むと、後ろ頭にペンが飛んできた。
「何?!」
「何ももぐってしまいよるんじゃ!!」
「俺の片づけ方に文句言わないでよ、良いじゃんパンツの一枚や二枚。」
「それこそ気持ちの問題じゃァ!!」
つかつかと近寄ってきたかと思えば、俺のパンツを勝手にたたみ直して引き出しに納めた。
「サカズキって世話焼きだよね。」
「お前がちゃんとやりゃぁ、せわぁないんじゃがの。ところで書類はまだか。」
「もうちょっとかかる。」
「そうか、さぼるんじゃないぞ。」
「はいはい、分かってるってば。」
邪魔したの、と籠と共に部屋を去ったサカズキを見送った後、振り返って様変わりした部屋をみた。一度ため息をついてから仕方なく、雨が窓を打つ音をBGMに書類に目を通すことを決心し、机についた。
だがペンが無いのに気付き、再度部屋を見回す。
サカズキが干していった自分の下着が目に入り、またため息。
「どーせ、パンツみながら仕事するんならもっとさぁ……。」
なんとなく、小声で呟き、苦笑い。
「あ、でもパンツ干してくれるって結構良いかも。」
先刻のサカズキの所作を思い出し、ニンマリと笑う。言ったらきっと、ばかもの、と怒られるんだろうか。
延々そんなことを考えて、数時間後、終わってない書類をみた彼に怒られるのはまた別の話……。
里流さんから誕生日祝いに頂きました。
嬉しすぎる・・・!
あ、里流さんからの分かりやすい解説はこちらです。
☆いらく(乾く)
☆ももぐる(ぐしゃぐしゃに丸める)
☆よいよ(全く)
☆たう(届く)
☆てご(手伝い)
☆きびる(結ぶ)
☆せわぁない(心配ない/問題ない)(本当は肯定的な意味が近い)
本当にありがとうございました!
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(10.07.04)