一周年記念企画 ばってんぬゐさん



サカズキは苛立たしげに廊下を歩いていた。
またクザンがサボリ、彼の部下に助けてくれと泣きつかれたのだ。
サカズキは仕方なく自分の仕事の手を止めてクザンを探しに行くことにした。
毎度毎度サボるごとに探しに行かなくてはならない自分の身にもなってほしいものだとサカズキは思いながら、第一の心当たりとしてボルサリーノの部屋に入る。


「おい!クザン!」


すると案の定中にはクザンがお茶を飲んでいて、ボルサリーノはせんべいを出していた。
どうやらボルサリーノもクザンのサボタージュに多少なりとも援助していたようだ。
ノックもなく入ってきた人物がサカズキだと知った瞬間、二人は慌ててお菓子を隠そうとしたがもう時すでに遅し。
サカズキの顔はみるみる険しくなっていった。


「お前っちゅうヤツは・・・!」

「サ・・・サカズキ・・・」

「ボルサリーノ!貴様もじゃァ!何を匿っとんじゃい!」

「いやァ〜休みたいって言うからねェ〜」


クザンのその言葉を鵜呑みにする海兵がどこにいるのだと言いたいが、ボルサリーノの性格上仕方のないことだろうか。
しかしだからと言ってサカズキは引き下がることはない。
ずかずかと部屋の奥に入り、ボルサリーノの前に仁王立ちした。
ソファにはくつろぐクザンがいたがとりあえず言うことの少ないボルサリーノの方から説教するべく、サカズキは口を開いた。


「こいつは仕事をしちょらんけェのお・・・しとらん以上休ませるわけにはいかん」

「まぁそうカッカしなさんな。オレだってやる時はやるんだから」

「それがないけェ!このわしが直々に来てやってるんじゃろうがい!」


サカズキの正しすぎる正論にクザンは溜息を吐いた。
そしてそんなに言うなら来なければいいのにとでも言おうとした瞬間。
そのいつもの光景をじっと見ていたボルサリーノがついに初めて二人の言い合いに口を挟んだ。


「でもサカズキ〜そんなこと言うってことはさァ〜君も少なからずクザン君のこと好きだよねェ〜」

「なっ・・・ん、んなわけないじゃろうがい!」


ボルサリーノのこれまたもっともらしい意見にサカズキはそう否定する。
しかし否定した言葉とは裏腹に顔は赤く動揺していて、肯定しているとしか思えない。
それを見たボルサリーノは面白くなって来たのか、ニコニコと笑う。
サカズキはその笑みに嫌悪感を覚えたのか顔をしかめた。


「え?何?そうなの?」

「じゃけェ違うと言うちょろうがっ!寄るなっ!バカタレ!」


それを聞いたクザンは顔を明るくさせて、ソファから立ち上がりサカズキに歩み寄った。
曲がりなりにも図星のため、サカズキは一歩下がりクザンと距離を取る。
しかしボルサリーノは言葉を止めることはしなかった。


「そうでしょうよ〜こないだなんてわっしのところに相談に来たでしょォ?」

「っ!バっバカタレっ!言うなァっ!」

「何なに?なんて言う相談?」


まるで恋愛の話に花が咲いた少女のような会話だが、それを咎める者は今は誰もいない。
そして勿論ボルサリーノは黙ることもなくさらりと暴露した。


「突然やってきてねェ〜何を言うかと思ったらクザンの好きな物知らないかってねェ〜?」

「っぐ・・・!んなこと・・・言うちょらんわっ!」

「じゃあ何て言ったのよ。相談に行ったのは事実なんでしょ?」

「お前は黙っちょれ!」


サカズキがそう苦し紛れに怒鳴るとクザンはむっと顔をしかめた後にサカズキを後ろから抱き寄せる。
突然抱きつかれて驚いたものの、目の前にボルサリーノがいるのを見て慌てて脱出しようと試みた。
しかしクザンはどんな手を使っているのか全く離れない。


「離さんかァっ!」

「何よ。いつもこうしたら喜ぶくせに・・・」

「よっ喜んどりゃあせんわ・・・っ!」


そう言いながらサカズキはボルサリーノをちらりと見た。
何かフォローしてもらえることを期待しているのだろう。
しかしいつもなら何かとフォローしてくれるボルサリーノだったが、どうやら今はそんな気は全くないようだ。


「へェ〜喜んでるんだァ〜まさか職務中にやってないよねェ〜」

「しとらんわっ!」

「まぁ今君は職務中なんだけどねェ〜」

「うぐっ・・・!」


ボルサリーノのクザンと似ているようで違う言い方にサカズキはぐっと黙り込む。
サカズキが黙り込んだのを良いことに今まで黙っていたクザンはここぞとばかりしゃべり始めた。


「でもそんなことボルサリーノに聞かなくても分かるでしょうよ」

「じゃけェ、んなこと言うちょらんと・・・!」


まだごまかそうとするサカズキにクザンは少し呆れながらも、腕の力を込めた。
そして耳元に唇を当てて、目の前にボルサリーノがいることも気にせず囁く。


「オレが好きな物なんてサカズキに決まってるでしょ」

「んぅっ・・・だっ、黙れェっ・・・!」

「はいはい〜いちゃつくなら部屋の外でやってねェ〜」

「なっ・・・!貴様・・・!」


ボルサリーノはそう手慣れた声で注意した。
そんな言葉にサカズキは反論しようとしたがクザンが勝手に話を進め始める。
勿論サカズキを後ろから抱きしめたままだ。


「やだ。外でやったらサカズキ恥ずかしがっちゃうでしょ」

「今でも十分恥ずかしいわい!離せ!」

「じゃあ何でわっしの前ではするんだい?」

「自慢」

「っ!!」

「へェ〜」


クザンがさらっと真顔でそう言えばサカズキは顔を赤くし、ボルサリーノは感心したように間延びした声を出した。
しかしそれが相当効いたらしくサカズキは大人しくなって、恥ずかしそうにうつむいてしまう。
それを見てボルサリーノは溜息を吐いた後に、ポツリと呟いた。


「でもねェ・・・あまり自慢するとわっしも欲しくなっちゃうでしょォ〜」

「あぁ!?」

「冗談だけどねェ〜」

「・・・・・・・・・」


一瞬冗談には聞こえないような声だったように思えたが、ボルサリーノの言葉はどこまでが冗談で本気か分からない。
常に単調な声色なため、声色だけでは判断出来ないからだ。
しかしクザンはニコニコと笑ったままでサカズキは嫌な予感が頭をよぎった。


「欲しいならあげちゃおうかなぁ・・・」

「なっ・・・!おいクザ・・・」

「だってサカズキ。ボルサリーノのところには行くくせにオレが抱っこしたら嫌だって言うじゃない」

「うぐぅ・・・んなことは・・・・っ」


クザンの声にサカズキは語尾を小さくしながらうつむく。
抵抗するためにクザンの腕を握っている手の力はどんどん弱くなっていくのを見ながらボルサリーノはまた口を挟んだ。


「別にわっしは構わないよォ〜サカズキがいいって言うならねェ〜」

「ほら。サカズキ良いってよ?」

「じゃかしい・・・・わい・・・っ」

「え?声小さい」


そうニヤニヤと笑いながら言えばサカズキが奥歯を噛みしめた音がした。
再び手に力がこもり、クザンのワイシャツにシワが寄る。
そしてしばらくの沈黙の後、サカズキはポツリと小さな震えた声で言った。


「・・・わ・・・わしは・・・クザンとおるけェ・・・」


小さな声だったが黙っていた二人にはしっかり聞こえたらしい。
それが分かったのかサカズキは煙でも出そうなほど顔を赤くしてうつむいて、クザンの服をぎゅっと強く握った。
身長は自分らと同じくらいなのにそのせいでサカズキはひどく小さく見える。
まるで父親から離れたくないと言う子供のようだ。


「オ〜・・・そうかい?」


本当に冗談だったのにとボルサリーノはニコリと笑った。
こんな冗談にさえ真面目に答えるのだからクザンは毎日楽しいだろうなと考えてしまう。
とにかく本人は恋人の希望通りクザンの方がいいと言ってくれたのだ。これ以上いじめるのは無意味だろう。
あり得ないとは思うが泣いてしまいそうだ。
もっともボルサリーノの行動には元々何の意味もなかったのだが。


「まぁ冗談だからァ〜気にせずクザン君と抱き合ってるといいよォ〜」

「なっ・・・!じゃかしい!下世話じゃァ!」

「あららら〜下世話だと思うんなら早ぇところオレの部屋に行こうか」

「はぁ!?お前・・・仕事はどうする気・・・うぉっ!」


遠回しに好きだと言ってもらえてクザンはかなりご機嫌になったらしい。
サカズキを抱きしめたまま引きずるようにしてボルサリーノの部屋から出て行った。
戸が開いて閉まる音を聞き終えて、ボルサリーノは溜息を吐いた。


「嫌いなら下世話だなんて言わないでしょォよ・・・本当にへったくそだねェ」


一周年記念企画でばってんぬゐさんからのリクエストで「三大将ギャグ」でした。
BLオッケー、わんこが遊ばれる感じにプラス雉犬大好きというお言葉を頂いたので調子に乗りました。
リクエストには精一杯応えたつもりですが・・・こんなんでよければどうぞ持って行ってください。
ではでは一周年記念企画にご参加頂きありがとうございました!

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(10.07.27)




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