苦々しい唇 / クザサカ



サカズキは基本クザンと違い、食べれぬほど嫌いな食べ物はあまりない。
それは海兵達の間では少し有名な話で、おかげで海兵達はサカズキへの貢ぎ物にはあまり困らない。
そして今日もとある海兵がサカズキへプレゼントを持って来ていた。


「赤犬さんはニガウリは平気ですか?」

「あぁ。食えんこともない」

「じゃあこれ貰ってくれませんか?いっぱい貰ったんですが何分量が多くて・・・」


海兵はそう言って袋を取り出した。
中に何本か入っているのだろう、ずしりと海兵の腕からぶらさがっていて重そうである。
サカズキはそれを立ち上がり受け取った。
そして中身を確認する。
中には確かにニガウリが二本入っていた。


「ほぉ・・・随分立派なもんじゃのう。どこから貰うたんじゃァ」

「家族から貰いまして・・・同僚には見た目がグロテスクですからあんまり受け取ってもらえなかったんですけど・・・よかったです」


そう言って海兵は照れくさそうに笑った。
それに釣られてサカズキもふっと笑って、袋を机の上に置く。


「すまんの。後でちゃんと食っておくわい」

「はいっ!では失礼いたします」


海兵はそう一礼して、踵を返して出て行った。
パタンと戸が閉まる音がして、サカズキは溜息を吐いてボソリと低い声で呟く。


「で、お前は何の用じゃ」


サカズキの言葉を合図に突然クザンが戸を開けて現れた。
どうやら海兵の用事が終わるまで外で待っていたらしい。


「いや。何やってんのかなぁと思って」

「別にどうもしちょらん。物を貰っとっただけじゃけェ」

「あらそう。何か変なモノ貰ったんじゃないよね?」

「ただのニガウリじゃ」


何やら疑っているクザンのためにサカズキはそう言って袋の中身を取り出した。
そのニガウリは本当に太いため自分の手でも指が一周しない。
とりあえずクザンにそれを見せれば、クザンは不思議そうな顔でそれを見た。


「何これ。見たことない」

「知らんのか?」

「うん」


どうやらクザンは本気で知らないらしい。
おそらくクザンの生まれた所ではあまり主流な食べ物ではなかったのだろう。
確かに見た目はごつごつしていて多少グロテスクなのだから無理はない。
毒があると言えば信じてしまいそうだ。


「触って大丈夫?」

「当たり前じゃァ。ほれ、わしだって触っても平気じゃろうが」


そう言ってサカズキはニガウリを持った手をクザンに見せる。
しかしまだクザンはそれが食べ物だと信じられないらしい。
ますます怪訝そうな顔をして、サカズキの手を見ている。


「食うと美味いぞ」

「本当かよ・・・?すっげぇ毒々しそうに見えんだけど・・・」

「なら食うてやろうか」

「え、大丈夫?医療班待機させておこうか?」

「大丈夫じゃ・・・バカタレ」


よほど不安なのかクザンはそう言ってはらはらした顔でサカズキを見る。
そんなクザンの不安を一刻も早く解消させてやりたくてサカズキはそのニガウリをかじる。
あまり深くかじると中のわたまで食べてしまうため、浅くかじった。
口の中に独特の苦みが広がり、何か付け合わせに食べたくなる。


「のォ?食えるじゃろう?」

「へぇ・・・じゃあオレも食べてみようかな」


クザンは関心を持ったのかそう呟いてサカズキに近付く。
サカズキはほっと安心してニガウリを差し出す。
しかしクザンはニガウリではなくそのニガウリを握った手を握り、そっとサカズキの前からどかした。
そしてするりと流れるようにサカズキの唇を奪った。


「ん・・・」


一瞬何が起きたのか理解出来なかったサカズキだったが、クザンの舌が自分の口の中に入ってきた瞬間ようやく口付けされているのだと気付く。
しかしクザンはサカズキの口内を舌で荒らずにすぐに離した。
おかげでサカズキはいつものように口元から唾液がたれることも、息荒くクザンを突き飛ばすこともなくその場に呆けていられることが出来た。
クザンは状況をよく分かっていないサカズキを見て、ニコリと笑った後に自分の舌をベロリと出す。


「サカズキの口の中、すっげぇ苦い」


そう言われた瞬間、改めて口付けられたことに羞恥を感じたのかサカズキはみるみる顔を赤くさせる。
そして一言いつものようにクザンを怒鳴りつけた。


某所でニガウリの話をして滾った

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(10.07.16)




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