ラブ・トーク / クザサカ



散々抱き合って唇を重ね合った後は先ほどの掛け合いなど嘘のように静かになる。
サカズキはクザンの腕を枕にして恥ずかしそうに布団に顔をうずめているが、腕枕をされることを承諾している辺り嫌ということもないのだろう。
それは分かっているがそんな矛盾がどうしてもつつきたくなる。


「ねぇ。顔見せてよ」

「・・・・・・いやじゃ・・・」


まるでだだっ子のような言葉にクザンはふっと微笑む。
何て可愛いんだろう。
自分より年上であるくせにこういう時だけ妙な頼りなさを感じる。
まだからかっていたい気持ちに駆られたクザンはわざと腕を揺らしてこれから動くという合図を送った後言葉を付け加えておいた。


「じゃあシャワー行ってくるから・・・・・・んっ?」


その言葉を聞いた瞬間、クザンが起き上がるより早くサカズキはクザンの袖を掴んだ。
しかし顔は相変わらず布団にうずめたままでどんな表情をしているのか分からない。
それでも裾を掴んでいるのは事実で、ちょっと引けばぎゅっと指の力を込めてクザンをベッドから出そうとしない。


「・・・オレ、シャワー浴びたいんだけど」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・ねぇってば」


言いたいことは何となく察しがつくがそれを自ら聞くことは一切しない。
そうすればせっかくの珍しい言葉がサカズキの口から漏れることもなく、頷きだけで終わってしまう。
それだけはされたくない。


「・・・・・な」

「え?」


サカズキが何か言ったことは聞こえたが、いかんせん布団にうずもれているため聞こえづらい。
そう聞き返しサカズキに耳を近づけると、ようやく期待通りの言葉が聞こえてきた。
ひどく小さく照れくさそうな声で。


「・・・いく・・・な・・・」


たった三文字だったがそれらがクザンの心臓を射貫くには十分すぎた。
そんな声出されたら従うしかないじゃない。
そう心の中で呟きながらクザンは先ほどいた位置に戻る。
そしてサカズキを正面から思いきり抱きしめた。


「もう甘えん坊だなぁっ!」

「うぉっ、だっ誰がじゃァっ!」


突然抱きつかれたサカズキは慌てふためいたが、ぎゅうぎゅうと力強く愛情を込めて抱き締めればすぐに無抵抗になる。
職場ではサカズキの方が明らかに上だが、ベッドの上では大将赤犬と恐れられるサカズキもただの愛しい恋人だ。


「サカズキ・・・愛してる」

「ん・・・・」


そうストレートに言えばサカズキは照れくさそうにうつむいてしまう。
やっぱり返してもらえないか。
そんな寂しげな空気をかもし出すとサカズキはまた小さな声で今度は愛しげにクザンの露出した胸を撫でた。
そして。


「わしも・・・・じゃ・・・」


サカズキの珍しい言葉にクザンは呆けたと同時にクラクラとした目眩のようなものを感じた。
あのサカズキが、オレに向かって愛してると言った。
そんな事実が目眩を呼び、やがて多幸感を生む。


「もっかい」

「わ・・・わしもじゃ・・・っ」

「もっかい」

「あ、愛しとる・・・」

「もっ・・・」

「ええ加減にせいっ!」


どうやらへそを曲げてしまったらしい。
ぷいと背を向けてしまった。
やり過ぎたか、と反省しつつも再びサカズキを抱き締める。
やはり抵抗はまるでない。


「サカズキ・・・」

「っ!」


後ろからそう囁くとサカズキはビクリと体を震わせた。
ぷるぷると震えている肩に内心ほくそ笑みつつ同じトーンで言葉を続けた。


「オレは何度でも言うよ・・・?愛してるってね」


そう言えばサカズキは返事代わりに回されたクザンの腕をきゅっと握ってくれた。



甘いの書きたい症候群が爆発したが大丈夫か?

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(10.10.06)




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