ヒロインはギリギリになって頑張るんだ / クザサカ
「青キジ大将!お誕生日おめでとうございます〜!」
「これ私達からです!」
そう言いながら複数の女性職員がクザンを取り囲む。
クザンは満更でもなさそうな笑顔で応対して女性達が手渡したプレゼントを受け取った。
その光景を窓の上から見下ろしてサカズキは忌々しそうに舌打ちをする。
「ったく・・・だらしない顔をしおって・・・」
そう呟いてサカズキは窓から離れて、ソファにどかっと座った。
今日がクザンの誕生日なのは前々から知っていた。
一ヶ月前になってクザンがおもむろに主張し出したのでちゃんと事前にプレゼントも用意した。
しかしそれ以前に自分には大きな問題があったことに今更ながら気がついたのだ。
「・・・どう渡せばええんじゃい」
自覚はしているが、自分はこういう色恋沙汰のイベントに関してかなり弱い。
恋人の誕生日、バレンタインデー、ホワイトデー、その他諸々のイベントがあるたびに毎度毎度どう渡せばいいのか悩みに悩んでしまう。
そして結局はクザンから言い出されて、罵詈雑言を吐き捨てながら手渡して終わるのが常だ。
今回こそはあの女性達のように素直に普通に誕生日おめでとうなどと言ってやりたい。
「・・・・・・」
しかしそう思ってもやり方もいい言葉も思い浮かばず、今も悩みは堂々巡りのままだ。
こういう時だけ女性の押しの強さに感服してしまう。
何故ああも惜しげもせず自分の気持ちを素直に言えるのか。
それが疑問でなおかつ羨ましい。
「・・・・・・・ハァ」
サカズキはそう溜息を吐いて机の上に置いたクザンへのプレゼントの箱を軽く撫でた。