ようするにどっちもどっち / クザサカ



クザンは実年齢のわりには少し子供っぽい。
サカズキと比べれば多少なりとも歳は離れているが、そうは言っても笑って許されるレベルではない。
構ってもらえなければ喚き、うるさいと言えばキスしろだの抱かせろだの言ってくるのだ。
まるで大きな赤ん坊のようだが、赤ん坊らしくないところと言えば、その無駄な性欲と無駄に回る頭だろう。
しかしサカズキも毎度毎度流されてしまうほど馬鹿ではない。
常日頃から拒絶するための理論武装をして、クザンの元へ行くのだ。
しかし今日のクザンはサカズキの理論武装を遙かに超えた対応を取ったのだった。


「おっ・・・お前は何を読んどるんじゃァ!」

「え?何って・・・超ゼツリンハツジョウチ・・・」

「タイトルを聞いとるんじゃないわっ!ここでんな物を読むなと言うちょるんじゃァ!」


執務室にいたクザンが読んでいたのは明らかに卑猥な雑誌だった。
表紙からしてその内容がすぐに予想出来る。
もし若い海兵ならば、乗ってくれたやもしれないが目の前にいるのは生真面目なことで有名のサカズキだ。
執務室でこのような物を読んでいることが知れてしまえば、取り上げられること間違いないだろう。
しかしクザンはあえてここで堂々と読んでいた。
それはサカズキに構ってもらいたいからに他ならない。


「いや。これ明日返すやつだから今の内に脳内に焼きつけておこうと思って」

「バカタレ!職場で読む物じゃあなかろうがっ!」


サカズキはそう怒鳴った。
それは至極当たり前のことでさすがのクザンでも屁理屈はごねないだろう。そう思ったのだ。
しかしクザンはしばらく考えてからニヤリと笑ってサカズキを見た。


「じゃあ・・・プライベートでなら読んでもいいんだ?」

「あぁ!?」

「だってそうでしょうよ」


クザンはそう当たり前だろうと言わんばかりの表情で言った。
確かにサカズキの職場で読むなという正論は、返せばプライベートなら読んでも構わないということにもなる。
しかしサカズキはそれを即座に是とは答えられなかった。


「っ・・・それは・・・」

「あらら〜・・・赤犬さんはオレにプライベートですらこういうの読ませてくれねぇわけか」

「っぐ・・・」

「でも赤犬さんにオレのプライベートをどうこう言われる筋合いはねぇしなぁ?言うんだったら恋人として言ってくれないと」


そう意地の悪いことを言えば、サカズキの顔はどんどん赤くなっていく。
サカズキが言いたいことはよく分かっている。
おそらく自分がいるのに何故そんな物を読むのだとか言いたいのだろう。
しかしそれを今確認してもサカズキは否と答えられてしまうことが予測出来たため、クザンは言葉を選びつつじっくり攻めていく。


「で・・・サカズキは一体オレがこれを読むことに何の不満があるわけ?」

「っうぐ・・・っ別に不満など・・・ありゃあせん・・・!」

「じゃあこれ、部屋で読むわ」


クザンはそう言って本をしまおうとした。
しかしその瞬間、サカズキがクザンの腕を掴んでそれを阻止する。


「・・・何?」

「っ・・・・・!」


思わず反射的に握ってしまった腕をサカズキは離せずにいた。
これを離せばこの本はクザンの元に行く。
しかし正直に言えばクザンにはこんな本を読んで欲しくない。
そんなのを読むぐらいならば自分が何かしてやると思ってしまうほどだ。


「・・・・・・・・っ」


ようするに自分は本如きに嫉妬しているのだ。
そんなどこの誰とも分からないような女の痴態よりも、自分を。
そう思った瞬間、サカズキはそんな自分が恥ずかしくなり腕を乱暴に離した。


「いてっ」


クザンが大してそうでもなさそうな声をあげたが、サカズキは気に留めずそっぽを向いた。
そらされた顔から表情を読み取ることは出来なかったが、真っ赤な耳がサカズキの羞恥心を物語っている。


「何よ。言いたいことがあるならはっきり言いなよ」

「っぐ・・・じゃあかしいわ!バカタレ!もう知らん!」


サカズキのいつもの怒声がいつもより弱々しく聞こえる。
どうやら信じてもらえていないようだ。
クザンはふと笑ってそれをゴミ箱に投げ入れ、サカズキに近寄りそっと抱きしめた。


「オレはサカズキの方が大好きだよ」

「っ・・・ん」


クザンが一際優しく声をかけるとサカズキはビクリと身体震わせた。
その初々しい仕草を見てクザンはふと微笑む。
するとサカズキは少しうざったそうに後ろにいるクザンを見た。


「何じゃ・・・何を笑うとる・・・」

「いんや?サカズキも年齢に見合わず幼いところあるなぁと思って」

「あぁ!?」

「ん・・・幼いっていうか・・・初々しいなって感じか」


そう分析されてサカズキはむっと顔をしかめた。
幼いと言われたのもそうだが、あのクザンに言われたのが腹立たしい。


「どこがじゃ・・・!」

「だって本に嫉妬したり、優しい声に弱かったり・・・結構初心で純情だろ」

「っく・・・じゃあかしいわいっ!」


確かにそれは隠しがたい事実だ。
一応人並みの恋愛はして来たつもりだが、いかんせんこの性格のせいかそう言われることが多い。
もちろんサカズキはそんなことを肯定したことは一度もない。
心のどこかでは認めているが、他人に対しては認めたことがない。
認めればからかいの種になるか、呆れられるかのどちらかだ。
そしてこの男もどうせからかうのだろう。そう思いクザンを睨んだ瞬間だった。
クザンはいつもより一際嬉しそうな顔で笑っていた。
そして。


「まぁ、そんなサカズキも大好きなんだけどもね」

「っ・・・・・・ほうかっ」


そう恥ずかしげもなく言われ、サカズキは照れくさくなりうつむいて肯定することしか、出来なかった。


定期的に来るイチャラブさせたい症候群。
書き殴り系クザサカ。

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(10.07.28)




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