次男の奇行
        

サカヅキは夜が更けた頃になってようやく家についた。
センゴクに報告書を渡した後になぜか掃除を命じられてしまい、それが終わったらばこんな時間になっていたのだ。
今頃兄のサカズキと末っ子のさかずきは夕食を食べ終えて風呂にでも入っているのだろう。
兄と共に風呂に入り楽しそうにしている弟。
そんな光景を想像しただけで苛立ちが募っていく。


「早く帰るか・・・」


そう呟いてからサカヅキは小走りで家まで走った。
おかげで家にはすぐに到着でき、玄関をそっと開けて中へ入る。
ひょっとしたらもう眠っているのかもしれない。そうなれば起こすのは可哀想だ。
とにかく居間へ行って荷物を置いてこようと戸の前に立った時、中から声が聞こえてきた。
どうやら二人共起きているらしい。


「何やってるんだ・・・こいつらは・・・」


この際サカヅキにとって問題なのは二人が起きていることではなく、二人が同じ部屋にいることだ。
中の音を確認しようと耳を澄ませると二人の会話が聞こえてくる。


「んぐ・・・もう無理らァ・・・入らんッ・・・!」

「だいじょうぶだよ・・・にぃにぃのおっきいんだからさ」

「バカタレ・・・こんなに沢山入れられたら・・・」


会話を聞いてサカヅキは自分の何かがサッと引くのを感じた。
会話の内容と言い、声の質感といいどう考えても中で二人はナニカをしている。
サカヅキは考える間もなく直感的にこれが色情的なものだと悟った。
それと同時にサカヅキは取っ手を握って戸を開ける。


「さかずきーっ!お前俺の兄貴に何をォオオオオオ!!」


そう怒鳴りながらドアを勢いよく開けた瞬間だった。
目の前にいたのはソファの上に座ったサカズキとさらにその膝の上に座るさかずき。
しかし。


「むぐっ?サカヅキじゃないか・・・おかえり。どうしたんじゃァ」

「あ、にーちゃん。おかえり〜!」


二人はサカヅキが想像していたような事は一切やっていなかった。
さかずきの右手には丸い形をした菓子のような物が握られていて、左手にはそれが大量に入った袋がある。
どうやらさかずきはその菓子をサカズキの口の中に詰め込んでいたらしい。


「・・・え?な、何やって」

「何って・・・さかずきが学校で作ったクッキーを食べさせられていてな・・・お前も手伝え。佃煮にするほど作って来たらしいけェの」

「にぃにぃがもうおなかいっーぱいなんだって。だからにーちゃんもたべてよ」

「コラ。サカヅキはまず夕飯を食うてからじゃ」


事情を悟ったサカヅキは脱力のあまり呆けてしまった。
そんなサカヅキの気持ちなどつゆしらず、サカズキは弟を膝からどかしてサカヅキの分の夕飯を用意しようと立ち上がる。


「まだ食うとらんじゃろう?今日はカレーじゃけェ。座って待っとれ」

そういつになく優しい言葉で言われ、サカヅキは湧いて出た激情に身を任せてサカズキに抱きつこうと飛び出した。


「兄貴ィっ!」

「ばっ・・・こっちに来るなァっ!」


が、しかし案の定身体に触れる前に殴られてしまった。


たまにはほのぼのも!

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(11.08.24)




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