虚構に浮き世を視る


生まれる事が罪である事を、子供は知っています。
だから、世界に拒絶されると言う事は、生きる価値も無いと言う事です。

「…おじさんは、何をしているの?」
少年はある時、夜中に家を飛び出して閉鎖された集落を見歩きます。時折、この国がどうしようもない事を感じ取ってしまう事が息苦しいのです。外の世界を見向いて回りたい、と言う好奇心に抗えないのですから。そうした中で、少年は男と出会いました。
「像を、削っている」
「像を?」
「そうだ、この国は荒れ果て――疑心暗鬼に陥り…それ故に力を求めるあまりに人ならざる力を欲する事を狂信している。そのせいで多くの民が死んだから、安らぎの為に像を掘っているのだ」
師匠の言葉を思い出します。この国はどうしようもないくらいに救いようがないのだと言っていたからです。けれど、少年には一つ疑問が残ります。
「ねえ、おじさん」
「何だ」
「――不死は、どうなるの?」
「どうだろうな…亡者となったら手を付けられぬから、あらかじめ不死街に隔離しておいて、亡者となってから…亡者狩りが直接始末すると言う仕組みだから」
「…そう」
少年は思い出しました。自分を世話していた庭師の最期を。少なからず不死街で悲惨な最期を遂げるよりも、マシだったのですが。
「…死ぬって、何なんだろう」
「人として、当たり前に生きて当たり前に死ぬ事が、正しい生き方なんじゃないのか。不死になったら…諦めるんだな」
「それは違う…違うんだ。もっと…何かに疎まれずに、不死であろうと人であろうと…誰でも正しい死に方をしたいんだと思ってるんだ…けれど…」
少年は、それ以上追求しませんでした。そんなあり方だったら、母さんも自分も辛い思いをせずに…けれど、それが世界の当たり前でした。
「…坊主、お前の言い分も御尤もだが……一つ言及しておく。この国はもう…駄目だ。あちらは竜の力を渇望し、こちらは疑心暗鬼に陥る奴が多い。不死云々以前に、いずれ国は亡ぶかもしれない…お前は、手遅れになる前にもっと人間らしい生き方をするんだ」
人間らしい生き方って、何だろうか。と考えた事がありました。何が幸せか、何が正しいのか分かりません。

けれど、それでも得たものがありました。
彼等の心に惹かれ、沢山の思い出に触れ――そして結局辛い別離を繰り返し…彼にとっての人間らしい生き方である事を、彼自身は気付いていません。
この世界は残酷だからこそ――だから、一人に居させて欲しいと願っていました。もう自分も誰かも辛い思いをするのなら、いっその事…。
しかし、とある老人は彼の思想が、大層気に入りました。正しい生き方も、正しい死に方を、自分自身で選べられるのだとしたら。それは、世界を疑う事への第一歩だったのかもしれません。
彼は、それに気づかぬまま。






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