もう残りは歌を作るくらいしか


「――で、これはそう言う話になると思いますが、実際はどうなのですか?これを買わないのですか?」
「…で、それはどういう心算だ?」
「は、はあ…だからそれはそれで困るのですよ。私も金に困っているのですから…」

酒場で一組の男性が屯っていた。一人は痩せこけてモノクルを付けている魔術師らしき男と、屈強な肉体を持つ鎧を纏った騎士だ。商談をしているらしく、男が魔術のスクロールを騎士に渡している。風のうわさで聞いたのだが、どうやらどこかの国で電撃作戦を行うらしく、献上した者には莫大なる富が与えられるとか。
馬鹿馬鹿しい。そんな目の矢先しか考えられない事をするには、どうも碌な事を考えていないらしいな。と納得する。香炉を炊きながら、煙管を回す。
「――で、この魔術のスクロールは、何と白き竜シースの伝承を後世に伝えたビッグハットローガンのスクロールなのですよ!」
「…ふ〜む、どうやら本物らしいな」
騎士も騎士で、彼が詐欺師である事を理解していない――少し、水を差しておく事にしてやるとする。
「――其処の騎士、其のスクロールは偽物だ」
「…は?一体何を?」
「…擬態でローガンのスクロールを真似て、実際は作ったスクロールだ」
「なっ…貴様、騙したのか!?」
「そ、そんな訳ないですよ!だから…」
連れて行けだの衛兵を呼ぶだの、野次馬が何だ何だと湧いてくる中――自分は『そう言った手品騙し』に騙されないと思うのか。と不意に思った。
「…しかし、実際に此れを着せられてるが…思った以上に動き易いな」
お金で雇われている以上、仕方ないのだが「その恰好では相当警戒される」と言う安易な理由で東国よりも近い、龍の国の衣装を着せられていた――どうも、女物の服に近い服装とは言えど、まだまだ世界は広しと言うべきか。龍の国は何で露出の多い服装を好むのやら…と思うのだが。
「―――『手品騙し』が見抜けなければ、この世界は生きていけない」
それはそうだ。例えば、樽に擬態するなら『物は無機物であるのなら、動いてはいけない』と言う暗黙のルールがある。擬態をうまく使いこなすには『手品騙し』が必要なのだ。あの詐欺師は自分の魔力を込めてローガンのスクロールと偽装していたのだろうか、本物はあんなちんけな魔力を込められていない。
だから、自分は『魔力に気付けられる』のだ。彼の巧みな口ぶりで、危うく騎士は騙されそうになったのだろう。
「…馬鹿馬鹿しいとは、こういうことか」
まあ、そう言う訳にもいかない事なのだが。本物のシースはもっと凄かったのだと言おうとしたが、黙っておく事にした。






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