世界のすべてを愛するということ


『叶えたい願いとか、あるかい?』

目の前の彼はそう、自身の決意を揺らがせるような問い掛けをする。女神となったタオに導かれてダアト最後の地に着て間もない頃、彼はそう言い見えないように大岩に椅子の様に腰掛けた。
「…君の問い掛けは何時も突発拍子で意味が分からないな。…流されるだけじゃダメだって事は、大体の見当はついてるけど」
『だってそうだろ。君はタオを救えなかった。イチロウの手を貸す事も出来なかった。ユヅルに意見を求める事が出来なかったーーそれを流されるままにと何と言おうかって意味だよ』
「…それで、彼等が納得する理由にも無いだろ」
『じゃああれが、最前線の結末と言えるかい?ボクは嫌だけど』
図星だった。アオガミの手を借りて、このダアトを生き抜く筈がーー何時の間にか世界の理の覇権を握る戦いに巻き込まれていったのを自分でも気づかないまま巻き込まれていったのを自覚している。けど、女神となったタオを見て――朗らかで友達思いのあの彼女じゃないと何処かで否定していたのも事実だ。アオガミも、自分自身の意思を尊重する。
「…でも、帰りたいって言う願いは、事実だ」
『その根拠は?』
「…僕にも分からない。けど、万魔会談の一件を経てユヅルやイチロウは変わってしまった。ミヤズも心配だし、どうなるか分からない…でも、もし願うが叶うなら、もう一度あの日々に戻りたいって言う意思があるんだ」

日常に帰りたいと言う意思。
其の為に何かを犠牲にせねばならない覚悟。

それはあのラフムとの一件で強く―――悲愴的に実感させられたのだろう。
「――もしよかったら、協力させて欲しいんだ。どういう方法で、どんな理由であれ」
『一つだけ、あるーーただ、この試練を乗り越えてから話そうと思う』
「うん…分かった。約束だ。まずは、鍵を全部揃えてからだ」


この少年は恐らく、座に居する事を拒むだろう。
(――すべては、あの明星の悪魔の思うがままって事か。嗚呼、気に入らないなぁ)
それには神殿の鍵を手にしている雷を操る魔神二柱と、酒氷の大蛇を屠らなければ話にならない。しかし、たとえどんな者が相手であろうと問答無用で容赦なく屠る、それがナホビノだ。
だが、あの魔王城での悪魔を狩る者達の問い掛けに、興味が湧いたのは『過去に犯した罰故の因果』でありう事も、また事実。
(でも、この旅で彼がどんな結論に至るのか…未だ、興味があるし、どのような結末にも至るのかが、気になるなぁ)

果たして、その終着点は因果か神殺しか、それとも凶星か。今は未だ、誰も知らない。






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