ノア-ある傍観者の涯U-


また、夢を見る。今度は胸糞悪い夢を。荒廃した東京で、憧れの同級生と共に得体の知れない化け物に貪り殺される夢。リアルに近しい夢なので勢い良く飛び起きてギリギリに遅刻しかけたのを覚えている。この夢の話を誰かにするとすればーーーその憧れの同級生のタオに対してこの話をしない方が良いだろう。と自分はそう思う。正夢?と思えるような、そんな夢を。

正夢に近い夢を見るとは限らないし、それが近々起きるとも限らない。夢とは、そういうものだ。

「…ミヤズって、夢を見ると言ってたよね?」

自分はそう、彼女に問い掛ける。最近、変な夢を見ると言っていたミヤズに対して、そう問い掛けたのが切っ掛けだった。

「…先輩って、普通に変わってますよね。普段は大人しく本を読んでいたりするのに対して、突発拍子も無い行動をするってよくお兄ちゃんに言われます」
「まあ、それは正論って言えるかな」
だって、よく言われるし。学園からの帰り道、タオとユヅル、ミヤズと品川駅へ向かう最中の出来事。
「…先輩って、変な人だって思われる事ありませんか?」「あるかも」「…やっぱり」
無茶しないでくださいね。とミヤズに釘を刺される言葉を発せられてしまった。こういうしっかりしている部分は兄譲りだ。
「…ところで、どんな夢を見たんですか?」
…夢の内容を正直に話したら、彼女に引かれるのであまり話したくはない。増してや、憧れのタオ先輩と一緒に得体の知らない化け物に殺されました〜だなんて、タオの前でそんな事口が裂けても言えないのだから。
「…あまり縁起が良くない夢かな」
「先輩、最近寝てます?」
「図書館から借りて来た本を読んでいるからあまり寝ていないかも…」
「やっぱり…夜更かしは体に毒なんですよ」
案の定ミヤズからため息をつかれる羽目になった。自分はいつも本を読んでいるからクラスからは「読書の虫」と言われる。そう言う自覚はあるにはあるけど。でも、優等生のユヅルと、何時も隅っこで本を読んでいる自分とは大違いだ。
「身体を大事にしてください。お兄ちゃんも先輩も、私にとって大事な人なんですから」
そう言われると、反論できないのが何かずるい。と何処かで思ってしまうところがあった。
「…でも、僕もミヤズが心配だと思ってる」
「先輩…」
「…無理しちゃ駄目だって言うけど、ミヤズも体を大事にしよう。そうしたら僕もユズルも安心する」
そんな事を言おうとした矢先に、最寄りの駅の群衆の群れが騒然とざわめく気配を感じた。一体どうしたのだろうと思った矢先にーー噎せ返る様な血の臭いを感じた。






×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -