遺塵の道を-2
ガランドウに咲く曼殊沙華。死は救いを提唱する魔神は神を否定するのだ。
親愛なる弟子へ。
やはり、この世界も駄目だったよ。神への存在亡き今、何かを縋る事しか出来ない天使達は多神教の神々に押され――世界は結果的に破滅へと追い遣られていった。
今は亡き造られし天津神が提唱した「世界は八百万の神々によって統治されるべきだ」なんて、それは理想事にしか過ぎないと言う事は――分かっていたのだろうか?
北欧の神は英知の為に他者を謀殺し手段は択ばぬ事を許容し、気高きオリュンポスの神は力と栄光を求む。月の神はそれでも変わらぬ世界に嘆き、破壊を司る神は宇宙の破壊に至る…。
――これが、多様性を求めた結果だ。神々は爭い、責任は自らの手にある。と追い遣る…それだけではない。法の神の世界を破壊した結果、魔王アリオク討伐の後に成を潜めていた混沌の悪魔達が動き出した。略奪、虐殺、力による奪い合い…弱者にそれらの居場所はなく、ただただ嘆くのみ…。
――それが、前の世界の過ちである事を気付かないのだろうか?
――とある魔神は、天使も悪魔も必要ない、人が輪廻から脱却する為に虐殺を厭わないと言うものを望み、その結果神殺しに討伐された。
けれど、其の神殺しも、たった一つの望みの為にすべてのものを皆殺しにした。
あるべき場所に、あるべきものへと還すために。
「悪魔は全ての人を不幸にする」そうとは思わない。誰かを幸せにするということがある。
「けれどその願い、叶うとでも?」――分かっている。
何かを願う度に、世界は壊れ、また再生されていくのだろう。
けれど、たった一つの願いが叶うのなら――私は祈ろう。
業を断ち切る、その時まで…。