日常の外に至る境界線へ至る夢に至る外



これから読み聞かせをするのは、不可思議な国の話だ。ある日、不死の少年は国から追い出されて、世界を彷徨っていた。ある時、辿り着いたのは不可思議な国。不死も神も竜も巨人も、何もかもを受け入れる平等な国。
草木や蝶、竜たちが楽しく共存し、受け入れる事も許される草地の楽園。
灼熱の大地に、巨人達が鉄を使って塔や街を作り上げる地上の夢。
氷の大地に、精霊たちが高らかに歌って女神たちを祭り上げる。
そして、彼は不死になった際に、別れを告げて――離れ離れになった恋人を見つける。恋人は不死になったが、運よくこの地に流れ着き――彼と再会する。そして、物語は終幕となる。

それが出来たら、どれほどの人が幸せになれるのだろうか。

つるつるとした床に座っていたから、腰とお尻が痛い。この場所は、誰かが「牢獄」と言った。すすり泣く声や、泣き叫ぶ声、発狂する声が響くらしい。そんなのは怪談話だ。そうに決まってると言い、この場所に忍び込んだ者たちは戻って来なくなった。
この場所に、自分の柔らかな声が誰かに届くと良いかな。と思い、独り言に近い朗読をしただけ――奇跡を記した物語を読み聞かせる事とは、ほど遠い。
「――けど、そんな夢の国を、作り上げられたら」
作り上げられたら?そんな事を言っても、非難の的にされるだけだ。読んだ本を、閉じて――置いてあった元の場所に戻した。

白竜の話し相手として任命され、一か月が経った。彼に色々な事を教えた。自分の事、家族の事、過ごした日々の事…。母親には「ちょっと用事があるから、すぐ帰って来るから」と言い訳をして、この場所に来る。
シースから色々な話を聞かされた、古の戦争の事、古竜の事、グウィン王とその四騎士の事、アノール・ロンドの事を。中でも、興味深かったのはフラムトとカアスの事だった。
フラムトとカアスは「蛇」…竜の成りそこないであり、姿は見せないものの――火継ぎは永遠だ。大王との約束を果たす為に存続させねばならない。闇こそが人の本当の力。闇の王になるべきだ。と言う大言をしてる癖に、姿を見せない臆病者とシースはそう言った。大義を成すなら、行動で示すべきだ。と言う文句に、自分はなぜか心躍るようだった。
自分は、本を読む事で色々な物語や、世界を知る事が嬉しかった。けれど、これは自分と彼の、二人だけの秘密だ。






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