退屈な日々に別れを告げる為の方法



恨みを買って生きている。と言う行為を行ったのはこれで何度目だろう。命を狙われる時が数回あるのも何度目だろう。自分は恨みを買う事に長けている。と誰かが言う。自分は卑怯な男である、と侍女が言うのも無理は無い。そういう人間だから。
だが、今回は違う。数人の亡国の騎士達に囲まれている。未だに王を慕う騎士達が、国の土地を奪った自分の事を恨んでいるのだ。強引な手段を行うのはこれが初めてではない、因果応報、自業自得と誰かが言う。

"貴方の為に、歌を歌おう――違えようと、共に行こう 夜の道を"

けれども、そんな騎士達の殺意は1人の乱入者によって唐突に絶たれた。風変わりな男であった。刀を持っていると言う事は――東国の人間であるのは間違いないだろう。其れに気付いて襲い掛かって来た騎士の未だに未熟な腕で振るう剣を脚で弾き、刀で首を刎ねた。
――自分を襲う騎士達を即刻刀で全員、虫を払うように切り捨てた後に自分を見た。

「…大丈夫か?」
「ああ、一応怪我は無い」

一応、怪我は無いと伝えておけば大丈夫だろう。だが、彼は自分を不思議そうに見ている。行く宛てが無いのだろうか?
「噂で聞いた、この国の王は異国の客を呼び寄せていると言うらしい。私はそんな聞き込みを見て、王のもとに行こうとしたが…その、」
居なかった。と言う事なのだろう。肝心の王が亡国の襲撃者に襲われているとなると、それはもうそういう話ではないのだから。その上、その触れ込みを知った者の大抵はイカサマ師であるのだから。だが、この見ず知らずの風景を見てどこか困惑そうに感じている彼は、他の者とは、違う雰囲気を感じる。
「良かったら、私の別荘で話をしないか?お前の事をもっと知りたい」
そう言うと、彼の表情は明るくなった。東国の人間は未知なる風景を見て心を踊る存在なのだろうか?ふと、ある歌が頭裏に過った。

"――貴方は、私の為にあるのだから"

それは、アーケンとヴェインの為に歌われた哀歌であった。自分は、この歌の続きを知らない。知る由も無かった。歌の続きを綴った詩は、あの時、焼き払われてしまったのだから。


「…遥々東の国から来たのは、大変だったのだろうに」
「そうだろう?色々な国を巡った。カリムと言う陰気臭い宗教の国や、騎士の国ミラ、砂漠の国ウーゴ…後は、なんだったか…」
彼の旅路は、なかなか大変なものだった。砂漠の国や騎士の国、宗教絡みの国を巡り巡っていたらしい。
「その東洋の剣術は、素晴らしいな」
「そうだろうか…護身用の、刀であるが…亡き師匠のものだ」
彼には師が居たらしい。だがある時、ある事件で師を自らの手で殺めてしまった。東国に居ても疑心暗鬼に陥るあの国に嫌気が差して出て行ったというものだ。それで放浪の旅路を続けていたのだ。
「もしよければ、私の国に滞在しないか?」
「…良いのか?貴方の迷惑にならないと良いのだが」
何を今更。彼は自分の命の恩人なのだぞ。迷惑も何も――今更そんな事を言うのなら、今頃は自分の事を放っておいてる。

「じゃあ名前、名前を付けてあげようか?」
「良いのか?では、遠慮なく」
これが、人生の転換期でもあり――その日が、彼との出会いでもあるのを、私は忘れないだろう。

「私の名前は――……」






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