絡繰り仕掛けのアングィス



「ところでお前さん、武器とかに興味があるのか?」

鍛冶屋の壮年の男はふん、と鼻息を荒くしながらも自分が手にしている剣を見据えていた。
「武器とは形種類問わず、戦う為に生きる者や、騎士にとっては時によって命取りになる前に、"そうならない"為の必需品だ」
「鍛冶屋らしい理念だな」
武器は人斬りの道具と言っていたあの国とは違い、異国と言えど様々な考えを持つ者もいるのは興味深い話だ。弓、槍、大槌、双剣…置いてある武器を見るとこうやって戦うのか。と納得する話でもある。
「ところでお前さんは、その手に持っている刀で何かしらの事情は問わんが――…戦いたい理由でもあるのか?」
手に持っている刀の事を言っているのだろうか。
「さあ、どうだろうな」
―――人斬りの為でも無くて、ただ目の前の敵を叩き捨てるだけしか使いようがないだけだから――
「…珍しい客人だ。大抵は自らの武勇を誇る為だとか、そんな大義を言っている筈なのだが」
それはあの一件以来、塞ぎ込みがちだった。長らくの間食事も通らない程体調を崩していた事もあったから。こんな血生臭い世界より、外の世界に行く方がマシに思えてくる。と言う考えをしていたからこそ、国を出て清々した…とは簡単にそう言えないと思うのだ。

――国を出て色々な国を巡り巡って来たが、やりたいことが分からなく思えてしまう。

後無し考えもせずに出て行ったからそれは当然の帰結だ。
「…この国は途轍もなく鉄が豊富に取れると聞いたが」
「ああ、それか。この国の王様が凄い人でな。何と鉄を生成する事が出来るんだ」
「鉄を生成?在り得ないだろう」
「いいや、本当の話だ。もしよかったら王に拝見すると良い…ただし、最近来客を騙るイカサマ師だらけで王はピリピリしているからな」
相当詐欺にあっていると言う事は余程人当たりが良い王なのだろうか?と疑問に思う。けれども、このまま立ち止まる訳にもいかないのだから、一か八かで拝見させてもらうしかない。

――けれども、それは思いも依らぬ運命を見せる事もある。


鐘が鳴り響く。後に鍛冶屋の話によると、とある敵国の王女がこの国の王子の為に贈った鐘がある鐘楼であるらしい。
「貴方の為に、歌を歌おう…それから、何だ」
この国は嘗て、とある国と憎み合っていた。しかし、とある国の王女とこの国の王子は、秘めた想いをしていた。それは確かなる、恋心。
「違えようと、共に行こう 夜の道を」
幼い頃に思い描いた理想は、そう簡単に叶えられる訳が無い。それは百も承知だ――だから、色々な国を一通り歩き、様々な光景を見た。悲しい事、嬉しい事…運命はいつ、理不尽な死や襲い掛かる暴虐が訪れる事を望んでいる。
「――貴方は、私の為にあるのだから」
それでも。信じられるのなら…と、一羽の燕が、空高く舞い上がる。

「…運命、か」
やりたい事が分からなくなるのなら、自分で行動すればいい。それが、たとえどんな結末を迎えようとも。






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