この世で最も醜美なる存在



「―――これで、私の話は終わりだ」

自分が息を吹いて終わった後に、男は「つまり、そう言った理由でこの国に来たのか?」と語る。
この世で最も美しい存在に狂わせられる。と言う逸話は、光の大王グウィンが鱗の無い白き竜シースに魅入られたと言うのを例えれば簡易に想像出来るだろう。人は美しいものを見たら簡単に狂わせられる。神も――小人も、全てが平等に。

自分は男と褥を共にしている。最初は彼から手を出した方だ、自分が最も美しい存在故に彼は簡単に人生を狂わせられた。と言うが――果たして自分自身は、どうだろうか?彼は得体の知れない自分を此処まで信頼してくれる。誰かの為に生きられると言うのは、とても素晴らしいと思いたい。
彼の手を取って――余生をこの国の為に使えば、きっと母も褒めてくれるだろう。


今の自分の姿は、彼が異国から調達した――即ち、砂漠の国の舞を踊る女性の衣服というものだ。じゃらり、と金属音のブレスレットが鳴り、宝石が散りばめられた飾りを纏ったストールがふわり、と床に落ちる。
彼が自分の舞う姿が見たい――それは、冗談で言っているのだろうか。だから自分は彼に応える為に敢えて着た。

つまり、そういう――舞う姿と言うのは、そういうことなのだ。


「ひぃ、ああああんっ!」
ぱんぱんと水音が響く。胎に彼の肉棒がずぶずぶと突き刺さっており、抜け落ちた首飾りを見ながらも、男の口付けを受け入れる。
「ふぅん、あっ…れろ…」
男の首に腕を回し、足を絡め合いながら自分は考える。成程、自分は余程『美しい存在だから男色を好まれる者からすれば、美しい存在故に穢したい』と言う訳だ。

醜悪な憎悪で彼等を叩きのめした自分は、同胞からすれば醜悪に近い感情を抱く故に、
美しい剣技としなやかな身体を持つ自分は、異国の者からすれば美しい感情を抱く。

――二律違反な存在だ、と自分を卑下しながらも、男の熱情を受け入れ続けている。

男に跨り、腰を振る。指で舌を舐める――詰まる所、『自分は醜悪な存在である故に、美しい存在』なのだろう、

分かりたくない感情を抱くからこそ、小人と言う存在は面白い。
分かりたくない感情を持つ自分が、異端だと思う彼等は自分を糾弾する。

嗚呼、こういう関係に至ったのは何時だっただろうか…ふと、考えればほくそ笑む。だが、あえてこの熱を受け入れよう。


――話は、彼と出会う前に遡る。






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