残響



「――あの子、親を早く亡くしているのに…一行と喋ろうとも関わろうともしない。気味が悪いわ」
「…しっ!あの子供に聞かれたらどうするの!早く行きますよ!」

使用人からの嫌味を敢えて聞き流し、自分は食事を終えた後に食器を洗った。この家に引き取られてから一年が経ったのだろう。この家の者達は自分に一層と関わろうとしない。それはそうだろう。気味が悪い子だから――それに、人の領域から"少し"外れている。仕方のない事だから。なんて言葉は不条理だ。
それに――少し、口から血を吐いた。この家の兄弟は養子である自分を相当気に食わないのだ。殴る蹴るを、家来の者や親が居ない隙に行っている。前々からだったのだろう。外からやって来た自分が優秀な存在である事に妬みを感じ取っていたのは。ただ、こんなことは日常茶飯事だと思えば、良いのだろう――そう思っていた。
――そう、あの時までは。


母の形見である髪飾りを見る。母の形見は、これしか持っていない。これを見れば、少し安心するのだ…母親が、いつも一緒に居るように感じられて…。しかし、不意に目を離したすきに髪飾りをこの家の一番上の兄に取られていた。
「か、返して…!」
髪飾りを取ろうとするも、兄の素早い動きで全く取る事が出来ない。何時の間にかやってきた兄弟たちは自分達をせせら笑っている。足蹴され、げほっげほっとせき込むが、彼等は見せつけに形見である髪飾りをばきり、と壊し―――。

ーーそれから、記憶が朧気だ。気が付けば、血が付着し、その兄弟の一人が持っていたであろうへし折られていた竹刀を持ち、ぼろぼろに再起不能となった兄弟の姿。ああ、なんてことを…自分は、この家の者たちに取り返しのつかない事をしてしまったのだ。その惨状を見た使用人は悲鳴を上げ、何だ何だと見世物を見るようにやって来た家の者達がやって来てーー罵声と悲鳴が飛び交う。もう、どうでもよくなってきたのだ。



あの一件以来の後、自室に引きこもっていた。使用人が化け物を見るような目で食事を持ってきて、そそくさに帰って行く日々。彼が家の者達を再起不能にした結果、跡取りが出来なくなってしまったと言う話を聞いた。布団に潜り、他者と関わる事を拒んだ日々が続く、そん最中の事であった。
「………え?」
手渡されたのは、手作りであろう、柏餅。壮齢であろう、その老人は――家の者達とは違う、異なる雰囲気を纏っていた。
「この家に居るのは、辛かろう」
「……そう、だけど」
「だが、刀は純粋たる暴力に使う物ではない。私が使い道を教えてあげよう」
「……ほん、とう?」
布団から抜け出し、自分はこの老人を信じて良いのかもしれない。と初めて、あの一件以来感じられるようになった。






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