欠伸をする猫、家族とのお茶会、■■■■



「母さん、大丈夫?洗濯や料理は、僕がするから」
「ええ、有難う…■■■■」
母親は何故か、豊かな街やのどかな港町に住む事を敢えて避け、この辺境の地に留まっていた。辺境の地に帰京する最中、彼女は流行り病に掛かり、寝込んで倒れてしまった。なので自分が買い出しや洗濯、料理をするようになった。最初は其れに慣れるまで時間がかかったものの、慣れれば何も問題は無かった。
道中で出会う人たちは穏やかで、「君の母の具合はどうだい?」「買い物、苦労しただろう。これ採れたての野菜だから持ってって良いよ」と自分に親しげな態度で接している。自分は頑張り屋で、病弱な母親の為に頑張る子供――そんな認識なのだろうか。その矢先だった。

数人の自分と同年齢の子が、貧民層と思わしき老人を虐めている。それが胸糞悪いと感じ取り、老人を助けに向かった。
彼等は、老人から何かを奪い取っている。金品から、老人が大事にしていると思わしき品物を。それは駄目だ、と咎めようとした。
「駄目だよ、幾ら何でも盗みは――」
「――うるさい!お前なんか来なければ俺達はひもじい思いをしないで済んだんだ!」
「……え?」
その同年代の子は、裕福な層と思いかけていた。けれど違うのは、豪華な服が所々解れていたところだ。

「――親父達はお前みたいな紛い物を恐れて、いつかこの家を潰すんじゃないのかと言う恐怖に負けて全財産をお前の母親に送り続けて破産して、住む場所も…食べるものも何もかも失ったんだ!」

其の事に、耳を疑った。――紛い物?それがどうして―――いや、それよりも――母さんに何でそんなものを押し付けて――話が、分からない…。

「――紛い物の血のくせに!お前なんか此処に来なければ良かったのに!どうしてお前だけが!」


無言で母親の所に帰った後、母に其の事を問い掛けた。しかし、彼女は決して私利私欲のために使わなかった。彼女はそれをひもじい者達に分け与え、その子等に帰すように分けたのだが…拒絶してしまったらしい。何でこんなつらい思いをしなければならないのだろう。僕はただ、当たり前のように生きたいのに…。母親に抱きかかえられ、暫く泣いた。


紛い物の血のくせに、お前なんか此処に来なければ良かったのに、どうしてお前だけが

自分と同い年の仔の仔の言葉を悟ったのは――母が死んでから後の事だった。

辺境の地である此処は、竜の信仰が秘かに根付いており、竜と敵対する神の者は排除する異様な姿勢だった。だからだろうか…母親は他者と関わらず、病で咳を患い――床に伏せるだけの日々だった。自分はそんな彼女の世話をして、朗らかな大人たちと他愛な会話をしながら必死に働いて、母親の世話をしていた。
「ごめんね…■■■、本当なら、お前は裕福な暮らしが出来ると思っていたのに…この地は、私達には向いてなかったのかもしれないわね」
どうして?と自分が問い掛けると、母は「だって、自分たちは異形の血を引いているから――この地に逃れた形でやって来たのに…お前だけは、不幸な目に遭ってほしくない」

それが、残酷な形でやって来たのは――母親が亡くなってからの、事だった。

何処かの家に引き取られる形で、高貴な者達に手を釣られて後ろを振り返れば…厄介払いと言わんばかりの表情をしていた。信仰、畏怖、異形の血――それらが、線と点で一つで繋がれば、彼等は親しいフリをして、自分を化け物を見る様な形で恐れていたのだ。

それ以降、自分は他者を信じるのが少しだけ――怖くなった。






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