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鬱血した痕 と 花の冠


私が名も知らぬ小人であると言う事は、忌むべき存在と同意義である。

王のソウルを見出した最初の死者、魔女とその娘達、大王グウィンらと共に古き竜との戦いに明け暮れ、そして勝利した我ら小人を小さな都に枷――牢獄として封印させた大王を我らは憎んでいたのか、それとも嘆いたのか。それは誰にも分からない。

だからこそ私は永遠に、決して暴いてはいけないように――と、大王からの戒め、忌むべき存在として墓へと埋葬されたのだ。

しかし、幸も不幸にも黄金の都の民は――闇撫の大蛇に唆され、墓を暴いてしまった。私はある魔術師に憑りつき、深淵の魔物と化し…ウーラシールを深淵へと沈ませたのだ。
ある魔術師は渇望していた。その欠けたペンダントを。ある魔術師は求めていた。とある姫君を。
深淵へと沈む事を恐れ、忌むべき存在が復活したと悟ったグウィンは――深淵歩きであり、伝説の騎士であるアルトリウスをウーラシールに派遣した。
アルトリウスは伝説の騎士であり、友であり銀色の狼と、傍らには麗しき乙女が居た。誰もが愛される存在だ。だからこそ、私は彼が妬ましかった。誰からも愛される自分と、誰にも愛されない我々は――何処で差が付いたのだろうか?
だからこそ、私は彼を同じ道へと辿らせるためにアルトリウスを深淵へと沈ませた。逃げ出した姫君を追う為に、未来の世界に逃げ込んだ彼女を自らの地へ引きずり込ませ――しかし、それはその時代の不死をも、この地に召喚させたと言う事実でもあった。

かくして、私はその名も知らぬ不死に討伐されーー『私』と『高貴なる魔術師』の境界が曖昧なまま、"わたし"はバラバラにされたのだ。


バラバラにされた"わたし"の中に、不完全なまま生まれた娘が居た。妊婦のように膨れ上がった子を宿し、深い闇の底に眠る娘はひとり俯いたままーー虚無と漆黒の闇だけしかない空を見上げている。孕んだ子を愛おしく撫で上げた彼女を見て、自分にもこうなっていたであろう、今は絵空事でしかない家族を思い浮かべながらも…"わたし"は溜息をうっとりつきながらも、それに干渉出来ぬまま見つめていた。


「はぁ、ああ、ふぅ、ん…」

腹を裂く様な痛みを抱えた娘は、声を必死に抑えていた。腹を破いて生まれようとしてくる子をお腹で押さえながらも、魂を裂く様な痛みが彼女を襲った。
「あぁ、生まれ、ひぃ、あああああ…!」
腹を裂いて生まれようとする子を必死に抑えようとするも、子は彼女の腹を裂き、どろりと血と羊水をべちゃべちゃと散らしながら誕生した。
異形の姿をしたそれは、到底小人と思えないだろう。それは彼女が"姉"であり"母"である事と、それは"弟"であり"我が息子"と言える二つで一つの存在であるからだ。"わたし"は彼女を抱き締めない事に歯痒かったのだ。
「かあ、さま…ねえ、さま?」
異形の存在は彼女を母親/姉と認識していた。彼女は闇の力を持たない。しかし、異形の存在は恐るべき闇の力を生まれながらにして持っている。当然、彼女は死ぬ事すら出来ない。忌むべき小人であり、"わたし"の娘なのだから。けれども辛い出産をしたせいで暫くは動く事が出来ないだろうに…と思った矢先の事だった。

「ふぁ、あ、あんっ…」

娘は未だ裂かれたお腹の修復が済んだであろうに、くちゅくちゅとクリトリスをき乱した。自慰でもするつもりだろうかーーいいや、貪欲に子を欲している。交尾する相手は居ないだろうに――いや、いた。生まれたばかりの我が子であった。
「あぁ、おね、がい…」
異形の存在は、突き出た生殖器を彼女のヴァギナに押し込み――ぐちゅりと膣の柔らかさに包まれながらも交尾を開始させた。
「あぁ、はあっ…!ひ、ふ、あんっ…はあ、ああっ!」
ぐちゅぐちゅとペニスをぎゅうううう…と柔らかい膣が包み込む。柔らかな乳房を大きな腕が包み込み、硬くなり始めた胸の果実を摘まむ。
腰を動かし、律動を始めた彼女を異形は優しく足を絡ませ、包み込む。彼女は狂ったとでも言うのだろうか?いいや、違う――死ぬのが、怖いのだ。孤独のまま死ぬ事が、最も恐ろしいのだ。
魂の片割れである存在と交尾し、"わたし"は此処に居る。お前は独りではないと思い込む事で、幸福感を得られる…けれど、自分が此処に居たらもっと別の方法が……そう思い込んだ矢先に、彼女は限界が来たのか、腰を必死で動かし…。

「はぁ、ああああああっ!」

――そして、果てた。
どくり、とペニスが彼女の子宮に子種を流し込む音が聞こえる。異形は娘からペニスを引き抜き、意識を完全にシャットアウトさせた彼女を優しく抱きかかえる。
嗚呼、この世界に干渉できるのも、此処までだ……私は、それがとても悲しかった。




猛吹雪が吹き荒れる都。そこは生命も、芽吹いた自然も何処にも無い。主無き大聖堂の中、一人で祈る女性が居た。
その最中、微かに香る黄金華の匂いがする。彼女は立ち上がり、聖堂の外に出た。其処に立っていたのは――。
「あぁ…」
亡霊は、二人目の存在を生みだした故に脆弱な身体を見上げて心配そうな顔をしている。大丈夫です、私は生きています。だから…心配しないで。
その実態亡き存在を、彼女はか弱そうな細い手でーー抱き締めた。

「――お父様……」






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