image

仮面 と 切断された指


白き竜は死ねば生まれ変わる。不死なる存在故に、生命の結晶を砕かれれば死ぬ存在でもある。だが、それ故に生まれ変わりの術を持つ。何度も何度も、生まれ変わる術を持ち得るのだ――鱗の無い竜、鱗が無い故に、脆弱な命を持つ。だが、その脆弱たる命を生まれ変わる事で命を繋ぐ事が出来る。それが、『不死』たる者の運命(さだめ)である。


「ねぇ」
今日も書庫にやって来た小さな来訪者は、久々に人の姿をした自分を見て驚いた。まるで物語に出てくる魔法使いみたいだと。
「今日も、光の大王とその四人の騎士と、古き竜の戦いのお話を聞かせて」
この少年は血筋が不義な存在が故に王家を追われた形で此処に居る。不義の子達は大抵は絵画世界に隠されるか――或いは『間引き』されるか。だが、この子供はどちらでもない…ひっそりと世を隠れて生きている。ひょんなことから書庫に迷い込んだ子供は、自分の話し相手になった。退屈はしなかった。この子供は色々な世界を知りたいと思っているが故に、様々な物語の話を聞かせた。
物語に出てくる魔法使いはあながち、間違いではない。火の魔術を使うイザリスの魔女が居るのならば、自分は結晶の魔術を使う魔法使いだ。
蛇人をからかって困らせたり、従者と一緒に踊ったり、置いてある蓄音機を触ったりしている彼は、楽しそうだった。けれど、彼は自分の日々を語ったりはしなかった。余程辛い事があったのか、それとも。
「どうした」
「僕ね、ずっと此処に居たい。色々お話して、いろんな本を読んで、ずっと一緒に……くぅ」
疲れて眠ってしまったようだ。だが、自分は敢えて言わなかった。もう直ぐ、この日々は終わるのだと。しかし、彼の気持ちを汲み取ってその事は、黙っておく事にした。


「――き竜は生まれ変わる。不死なる存在故に、生命の結晶を砕かれれば死ぬ存在でもある」
それが白き竜であり、ソウルの魔術の祖でもある。彼女はその文を指で指しながらも、自分の方を見る。
「…それが、白き竜の始まりなんですか?」
「そうと言える。ただ、この王家は凄く白き竜全般の関係全てを忌避している。何故だか分かるか?」
「…分かりません。私は古老に預けられて育てられましたから、それ以上の事は何も…」
「――不死だからだ」
「不死?」
「――ロスリックは、アノール・ロンドの再来とも言われている王家の存在であり、故に不死なる存在を忌み嫌う。だから、白き竜も例外ではない」
「…随分、詳しいんですね。…何故、それに詳しいのですか?」
ふと、思い出す…楽しかった、あの頃。もう戻れない、あの日々。…だが、それも悪くなかったと思えてくるのは、何故だろうか。

「…何故だろうな。」






×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -